さて、今でも「トランプ中毒」になっているのは誰か? 彼らがいなくなれば、あるいは解毒されれば、アメリカは元に戻るのだとすれば、彼らを特定し、分析することには意味がある。
まず、トランプ大統領のイランに対する行動の予測、見通しをはっきりさせておこう。発言が力を持つのは、大統領であることだけが理由だから、最も重要なのは、11月3日の中間選挙である。前述したように、6月中旬以降は影響力が大幅に低下する(共和党の予備選挙を勝ってしまえば、公認候補者はもうトランプ大統領に反旗を翻すことのコストが大幅に低下する)から、それまでは支持率を維持したい。
そのためには、とにかく原油価格を下げることである。交渉をするのも、再開するのも、目の前の原油の先物価格を下げるためだけである。しかし、ホルムズはどうする? どうにもならない。だから、イランとの交渉条件は「99%核」、ということなのだ。事実上、ホルムズには触れない。
核開発の話は、どうとでも解釈できる。核兵器に関して約束させた、とトランプ大統領が成果だと言い張れば、成果なのである。実態はどうでも構わない。イランの側も、あくまで平和利用だとし、濃縮を5年停止するなど、トランプ大統領のいる間だけ止めると約束すれば十分なのだ。
だから、トランプ大統領がしたくなったらいつでも、交渉に勝ったと叫んでやめることができるのだ。もし交渉が失敗したと言われたら、それは全部J・D・バンス副大統領のせいだ。それだけのことだ。交渉の内容、結果には関心がない。自分が勝った、と言えるかどうかだけなのである。
トランプ大統領は次にどこへ向かうのか
そのとき、ホルムズがどうなっていようと知ったことではない。原油先物価格は下がっているから、現物の価格がアジアで1バレル=150ドルに跳ね上がっていても、関知しない。散らかしっぱなしで構わないのである。というか、もうどうしようもない。ホルムズがあいたとしても、アメリカ、イスラエル、イランが破壊した原油や天然ガス関連施設は戻ってこない。何十兆円かの損害になるだろうが、それはどうやっても戻っては来ないのである。
だから、世界はコスト高が続き、景気は減速する。完全なスタグフレーション(景気停滞下のインフレ)である。それなのに、株価は何事もなかったかのように上がっている。停戦交渉も成功していないのに、終戦どころか、もともと、戦争など起きていなかったような株価水準になっている。終戦しても、ダメージは経済にも大きく残り続けるから、株価は暴落するはずだ。しかし、スタグフレーションが完全に実体経済を停滞で覆いつくすまでは、それには気づかないふりをするのだ。
ではトランプ大統領がイランに飽きたとすると次はどこへ向かうのか?
これまでの行動原理は2つ。1つめは、強いものには吠えるが戦わない。弱い者には徹底してたかる。イスラエルには言いなり。以上。関税にもグリーンランドにも、あらゆることに欧州はアメリカにきちんと論理的な正義を訴えたが、結局、トランプ大統領は吠えたが、吠えただけで終わった。
日本は気に入られたが、世界一、お土産を渡した。約88兆円の約束をし、実際に10兆円以上も具体的に確約してしまった。しかも、全部、選挙の激戦州のアメリカ国内用の電力など、日本の経済安全保障にはほとんど関係ないもので、ただの贈与だ。弱い子分からいちばん多く巻き上げるのが、弱いいじめっ子である。
2つめは、動けば動くほど、孤立が進むから、手段として選ぶものは、大統領権限でできることだけだ。関税も彼の希望としては、自分の思いどおりにできると思ったら、裁判所に止められた。当初は、減税をしまくると思われていたが、これも議会の協力が必要である。議会の承認が必要な政策は、最初の減税を、関税(見込みだけ。しかも、返還となった)を財源に行った後は、議会なしで、自分だけでできることだけやっている(それしかできない)。それが、関税と戦争だったのだ。
次ページが続きます:
【トランプ大統領の暴走は加速するだけだ】
