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ビジネス #スズキ 異次元のインド投資

きれい事だけではないスズキのインド生存戦略、牛ふんで走る車からファンドまで…農村を底上げし「次の10億人」を囲い込み

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スズキの鈴木俊宏社長
ジャパンモビリティショーで牛ふん由来のバイオガス燃料について語る鈴木俊宏社長(撮影:尾形文繁)

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「まだ自動車に手が届かない『次の10億人』にアプローチしたい」――。

インドの新車販売で4割のシェアを握るスズキ。ただ現在、接点を持っているのはまだ、人口14億人のうち都市部に住む4億人の自動車購買層にすぎない。鈴木俊宏社長は「10億人の農村市場を開拓せよ」との指令を現地社員に飛ばす。その象徴的な取り組みがついに始動した。

インド西部に位置するグジャラート州バナスカンタ地域のブカラ。一面、綿花畑が広がる農村地帯に、今年1月にバイオガス工場が開所した。スズキがインドで普及を狙う「牛ふんで走る車」のための実証施設だ。

500の農家から牛ふんを回収

インドで神聖な動物とされる牛は、国内に約3億頭もいるほど生活に密着した存在だ。スズキは現地最大手の乳業組合と提携し、そのふん尿を近郊の農家から集め、プラントで約35日間発酵・分解させ、可燃性のメタンガスを精製する。これを天然ガスの代替燃料として、インドで普及しているCNG(圧縮天然ガス)車に充填し走らせる。

10頭の牛ふんを集めることで、車1台が1日分(60km)走れるだけの燃料を生産できるとスズキは試算する。

ブカラ工場では半径15km圏内の30の村、500の農家と契約し、1日当たり約100トンのふん尿をトラクターで回収、850台分の燃料ガスを生産している。敷地内に併設するバイオガススタンドでは、認知拡大のため周辺相場より5ルピー安い1kg当たり75ルピー(約130円)で販売し始めた。2~3分で満タンにでき、見た目はガソリンスタンドとほとんど変わらない。

「インドでの脱炭素の現実解になるうえ、農家の収入も増やすことができる」。バイオガス事業部主幹の山野博之氏は、事業の意義をそう強調する。

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【最大の課題はコスト】

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