インド西部の都市グジャラート州アフマダーバードの空港からさらに北西へバスに乗って2時間半。牛やラクダが道路を横切る荒涼地帯を越えた先に、マルチ・スズキのハンサルプール工場がそびえ立つ。
現地では「まだ涼しい」といわれる3月でも最高気温は37度。燃えるような赤い夕陽が沈み始めた頃、仕事を終えた大量の作業員を乗せたバスが工場のゲートを通り抜ける。
スズキの現地子会社であるマルチ・スズキは、インド市場で新車販売シェア約4割を握るガリバーだ。市場黎明期の1983年に進出して以来、低燃費・低価格の小型車を武器にインドの国民車としての地歩を築いた。
現在インド内に4つの工場を有するが、成長する巨大市場の需要を賄うべく、さらなる生産能力増強へ異次元の工場投資に打って出ようとしている。
「生産が需要に追いつかない」
2017年に稼働を開始したここハンサルプール工場では、インド各地から採用した約3600人の従業員が週6日勤務の人海戦術で働き、自動化を進めた設備もフル稼働させている。「それでもまだ生産が需要に追いつかない」と同工場の生産責任者はこぼす。
ハンサルプール工場は3つの生産ライン合計で年産75万台の生産能力を持つが、24年度は79.3万台を生産し、稼働率は100%を超えた。25年度はそれを上回るペースで稼働を続けており、86.2万台の生産を計画する。
さらにこの26年夏には第4ラインを立ち上げ、生産能力は100万台に到達する。これによりハンサルプール工場は、日本で最大の湖西工場(静岡県湖西市、24年度は53.6万台生産)の約2倍の生産規模を持つことになる。
工場敷地内の広大なモータープール(駐車場)には、生産ラインでの最終検査工程を終えたスポーツ車「スイフト」やSUV(スポーツ用多目的車)「フロンクス」など約1.5万台の完成車が見渡す限りずらりと置かれている。
ただ、これでも4日分程度の生産台数にすぎずトラックや鉄道での輸送を待っている状態だ。工場や販売店の末端在庫がほぼ払底し、造った側から売れていく異例の状況が続いている。
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【スズキに吹いた神風】
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