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ハンガリー・オルバン政権大敗で欧州ポピュリズムの潮目は変わったのか/新興保守の勝利で社会民主主義勢力弱体が続く

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ハンガリー総選挙でオルバン首相を破り、政権交代を果たしたマジャール新首相(写真:2026 Bloomberg Finance LP)
  • 安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)
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そもそも経済政策一つとっても、一国で解決できる問題は少ない。社会民主主義的価値観を他国や他地域に適応することも困難だ。さらに欧州各国で台頭するポピュリズムは、高い失業率、国家財政の逼迫を外国人労働者のせいにすることで有権者の支持を集めており、政権与党になった時に移民への責任転嫁だけで経済問題を解決できないことに有権者も気づき始めている。

ポピュリズムの台頭にも暗い影を落とす

フランスの例のように、左右の既存大政党で高い失業率を抑え込めなかった経緯から、極右と極左勢力のポピュリスト政党が支持を拡大させる一方、選ばれたマクロン中道政権も機能不全に陥っている。オルバーン氏はポピュリスト政治家とされたが、左派が勝利することもなかった。マジャル新政権は親欧米的な外交政策を打ち出しているものの、オルバーン氏と同様にウクライナへの武器供与を拒否し、ウクライナの欧州連合への急速な統合にも反対している。

その意味では、フォン・デア・ライエン委員長は、マジャル新政権誕生にもろ手を挙げて歓迎する状況にはない。「オルバーン首相が退陣すれば、われわれの生活は楽になるだろう」と欧州理事会の1人は選挙前に語ったが、オルバーン氏が「ハンガリー国民の存亡の機」として主張したドルージバ石油パイプラインの再開は、ホルムズ海峡の航行の危機に直面し、案外、支持されるかもしれない。果たしてブリュッセルとの和解は実現するのか、まだ、答えは出ていない。

イラン危機によるエネルギー危機はいまだ終焉していない。この間に深まったEUやNATOとアメリカの亀裂は修復の見通しが立っていない。はっきりしていることは欧州も自立主権戦略に舵を切っており、安全保障面だけでなく、エネルギー調達、貿易においてもアメリカ依存を弱める方向に向かっている。とはいえ、アメリカの経済力、軍事力なしに世界の安定に寄与することもできないことは理解している。

一方、アメリカの同盟国として良好な関係にある日本は、イランやイスラエル、ウクライナとも良好な関係を保っている。軍事行動はとれないにせよ、今起きている3つの大きな紛争に対して停戦を後押しする外交は積極的に行える立場にある。エネルギーの海上輸送では当事者双方と話せる余地があり、復旧・民生支援で信頼を積みやすい状況にある。

日本は、イランには緊張緩和外交とホルムズ海峡の安定化、ガザには停戦・人道・再建、ウクライナには対ロ制裁維持と復旧・地雷除去支援で実行力を示し、当事国への信頼を積み上げることができる。泥沼化する紛争で当事国が出口を見いだせない中、信頼度が高く、財政力、技術力、実行力を持つのは日本しかない。関与の限界と道筋を明確化し、存在感を示す千載一隅のチャンスと受け止めるべきだろう。

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