その後、朝日新聞記者の質問部分だけが切り取られた動画が拡散され、記者を揶揄する書き込みが続いた。
そこで、弁護士ドットコムニュースは改めて池上さんに、こうしたネット上の反応について電話で話を聞いた。すると、池上さんは次のように話した。
「私は怒ったわけじゃない。(ネット上の)コメントとかいうのは、相手がとんでもないことを質問したと思い込む人もいる。でも、あの場にいた人は分かるんじゃない?そんなおかしなことじゃなかったと思うけどね。あんまり『あいつが悪い』とかいう必要もない。質問の仕方が悪かったのかもしれないけど。間違えて捉えられたら困る」
記者は会見で関係ないことも質問する
会見の出席者やテーマ、時間にもよるが、筆者のこれまでの経験上、記者会見では一般的に、前半部分で当事者のコメントや細かい事実関係の確認に関する質問が集中する。
これは速報ニュースに盛り込むための質問であるともいえ、各社の記者は必要性の高い質問から優先して尋ねることが多い。
そして、ニュースを報じるために最低限必要なコメントや事実確認が得られた後に、質疑の時間がまだ残されている場合は、別の報道に活用できるようなコメントを取るための質問や、今後の取材で話を聞く相手を探す際の参考にするために会見出席者の考え方を事前に確認する質問など、会見の趣旨に関係のない質問をすることが少なくない。
記者は一般的に、一つの機会でできるだけ多くの材料を引き出そうとする。そのため、当日扱うニュースに盛り込むつもりがなくても、別の取材や報道につなげられる可能性があれば質問をするというのは基本動作ともいえる。
近年、記者会見の様子が生中継されたりオンラインで流されたりすることが珍しくない。
最近では、日米首脳会談の際に、テレビ朝日の政治部記者がトランプ大統領に質問を投げかけた場面をめぐって、賛否両論を呼んだ。
質問の稚拙さや記者の不勉強を批判するのは自由だが、会見の一部を切り取って当事者の思いまでをも歪めて発信するのは、マスメディアが批判されてきたことと同じ行為ともいえる。
一方で、記者は質問をするのが仕事だ。ネット上の反応を恐れて質問をしなくなったら記者は終わりだ。
