親が「子どものため」に尽くしているとき、無意識に脳内では次のような計算が働いています。
「これだけわかりやすく説明したのだから、理解してほしい」
「あなたの将来を思って言っているのだから、感謝して聞き入れてほしい」
「生活をサポートしているのだから、せめて宿題くらいは進めてほしい」
しかし、相手は子どもです。彼らには彼らなりの「今の論理」があり、親が想定する「未来の利益」のために今を犠牲にするという合理性はまだ持ち合わせていません。
ここで、「親の投資」と「子どもの反応」の間に、大きなギャップが生じます。このギャップこそが、怒りやイライラの正体だと考えられます。つまり、親は子どもに怒っているのではなく、「期待したリターンが返ってこないという現実」にストレスを感じているのです。
上下関係から「横の関係」へ
この状況を変えるためには、努力の量(頑張る)を増やせばいいということではありません。「子どものため」から「子どもの立場で」へシフトすることです。
一見似ているこの2つには、決定的な違いがあります。
「子どものため」は、親が「正しい答え」を持っており、子どもをそこへ導こうとする上下関係(縦の関係)に基づいています。ここには、親が「上」から子どもをコントロールしようとする力が働きます。
一方、「子どもの立場で」は、子どもが今見ている世界を、親が隣に座って一緒に眺めようとする対等な関係(横の関係)です。
例えば、子どもが宿題をせずにゲームをしている場面があったとします。
「今やらないと後で自分が困る」「学力がつかない」と考え、大人の正論で攻めます。しかし、子どもにとって正論は「自分を否定する攻撃」にしか聞こえません。結果、親子で感情がぶつかり合います。
「なぜ、今この子はゲームをやめられないのか?」と考えます。「学校で嫌なことがあって現実逃避したいのか」「単純に脳が疲れていて、切り替えのスイッチが入らないのか」。子どもの立場の景色を想像すると、不思議と「攻撃」ではなく「共感」や「分析」のスイッチが入ります。
この「立場の転換」ができるようになると、親の心に「余白」が生まれます。子どもを動かそうとする「コントロールの重圧」から解放されるからです。
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【子どもが「自発性」を取り戻すメカニズム】
