むしろ筆者がより課題だと感じるのは、「なりすましなどありえない」や「フェイクは見抜ける」といった担当者の意識だ。実際にこの記事を読んでいても、自分には関係ないと思った読者も多いのではないか。
「自分には関係ない」「自分は間違えない」と思えば必然的にバイアスが生じ、ふとした違和感を察知できなくなる。自分はだまされる可能性があることを意識することと同時に、万が一被害に遭っても隠蔽せず公表できる企業文化の構築も重要だ。
これだけはやって!基本的な対策法
現状、なりすましやディープフェイクを完全に対策することは、残念ながら不可能である。しかしそれゆえに、基本的な対策を徹底することが重要だ。
接続元のIPアドレスを確認し、居住地と一致するかチェックすること(IPアドレスの偽装も可能だが、それでもしないよりはましだろう)。オンライン面接の場合は、顔を横に向けさせたり、カメラに手をかざしたりといった動作を指示して、ディープフェイクが苦手とする動きで確認する手法が有効だ。
一番確実なのは、本人と対面して確認することだ。「協力者」が代わりに現れるリスクが残るものの、一度でも対面面接を挟むことは、ディープフェイクを排除するうえで最も確実なリスク軽減策となる。
また、採用後も一定期間は社内システムへのアクセス権限を限定することも、万一の被害を最小化するうえで重要な対策である。
こうした対策にも限界はあるが、同時翻訳技術を利用した日本語は英語に比べて一定のハードルがあるのも事実であり、日本語でのなりすましはまだ目立った事例は多くない。
だからこそ海外の先行事例を定期的に確認し、対策をアップデートし続けることが現状では最も現実的な備えだ。完璧な防御を目指すより、「だまされるかもしれない」ことを前提に、採用プロセス全体を設計し直す発想の転換が求められている。


