一方で、気にかけていることもある。音楽の聖地として親しまれた「中野サンプラザ」の行方だ。老朽化を理由に取り壊す予定だったが、工事費の高騰などの影響で計画は白紙に。「サンプラザも好きなので、なんとか再利用できないのかな」と吉川さんは思いをめぐらせる。
住み替えるならやっぱり中央線。「ここは間違いなく愛している」
最後に「もし住み替えるなら、また中央線を選ぶか」と聞いてみた。吉川さんは家を買ったこともあり引っ越す予定はないそうだが、やはり中央線沿いが頭に浮かぶという。
「熱海に住みたいなという気持ちもありますけど(笑)、やっぱり中央線がいいんじゃないですかね。ここは間違いなく愛してるので」
そう言ったあと、思い出したようにこんなエピソードを教えてくれた。
以前、三鷹市が主催していたコンサートに通ったことがある。クラシックだけでなく、ハーモニカの五重奏や、ウクライナの民族楽器「バンドゥーラ」を使ったコンサートなど、それまで触れたことのないジャンルの企画があり、質の高いコンサートを無料あるいは格安で楽しめるのだという。近いから行ってみる。そうした偶然の出会いが絶えないことも、この沿線から離れられない理由のひとつなのかもしれない。
実家にいた頃から数えれば、人生の大半を中央線とともに過ごしてきた。暮らしのなかで積み重ねてきた沿線との関係は、理屈では説明しきれないほど深い。そこにあるのは、便利さとはまた違う、長年かけて体に染みついた「愛着」のようなものなのではと感じた。
