窪田:今日はルビ財団の大いなる目標をお聞かせいただきました。松本さんご自身が、今後目指していきたいことはありますか?
松本:私はいまだに、英語が上手になりたいという思いが強くあります。近年は茶道をやっているのですが、あれは単なるお茶の世界だけではなく、もっと日本文化の真髄のようなものを含んでいると思うのです。
窪田:総合芸術でもありますね。
松本:そうした複雑なものを、外国の方にもきちんと説明したいんですよ。
窪田:それはなかなか高難度ですね。わびさびなどの概念は、やっぱり伝わりにくいでしょう。
バイリンガルになるより大切なこと
松本:そうなのです。岡倉天心の『茶の本』は、もともと『The Book of Tea』として英語で書かれた書籍です。先ほども、この原書と邦訳本を比べながら読んで、「ああ、この意味でこの単語を使うんだな」「こういう言い回しで伝えるんだな」なんてことを勉強していました。本当に、英語ではいまだに苦労しています。
窪田:でもアメリカで暮らしていらしたし、今も海外にいらっしゃる機会は多いんですよね?
松本:はい、ニューヨークにはたぶん220回ぐらい行っています(笑)。今もアメリカのマスターカードの取締役をしているので、ビジネスでの英語は大量に使っているのですが、やっぱり文化的なことを説明したり議論したりするのは難しいですね。でも、それこそが若いときに英語を学んでやりたかったことなので、苦しみながらも続けています。
窪田:日本だとマルチリンガルとかバイリンガルとか、言葉が流暢に話せることに目が向きがちです。しかし、いちばん大事なのはバイカルチュラル――つまり、言語だけでなく双方の文化や価値観も身に付けていることだと思います。言語は文化と強く紐づいているものなので、そこから深く理解していないと伝わらないんですよね。本当は単語や文の意味だけでなく、そのコンテクストにこそ重要性があるのですが、それはすぐに学べるものではありません。
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【アメリカにはない「茶道」を英語で伝える難しさ】
