松本:大人はよく「子どもが漫画ばっかり読んでいて困る」などと言いますが、よく考えたら、漫画ってルビがあるんですよね。だから子どもにとっても読みやすいのでしょう。それ以外の本にもルビが振ってあれば、もっとたくさんの本を読んで、多くの世界を知ることができると思うのです。
窪田:まずご自宅が図書館のようになっていて、ランダムにいろいろな知識と出合える環境になっていたというのが素晴らしいです。子どものころはとくに、そういった偶然の出合いがとても大切なのだと思います。知らなかった世界に触れて、自分にとってこういうものが面白いんだな、自分はこういうことに興味があるんだなと気付くチャンスを、ルビが増やしてくれるかもしれないということですね。
でも、最近は昔に比べてルビを見なくなった気がします。ルビのある出版物は減っているのでしょうか?
古事記の時代から、日本人はルビに親しんできた
松本:つけ足しておくと、図書館も大好きでしたよ。小学校低学年のころは家にある本を読んでいましたが、高学年になると、よく友達と近くの公立図書館で遊んでいました。そこにあった図鑑も好きでよく読んでいましたが、おっしゃるとおり、当時に比べてルビは明らかに減っています。というか、その時点でも過去に比べると減っていたのです。
もともと日本の本には、古事記の時代から「読み方ガイド」のようなものがついていました。「ここではこの文字をこう読むべし」という、音読みと訓読みの違いに配慮した指示が、当時の人々によってつけられていたのです。さらに平安時代にはかな文学も現れて、江戸時代には広く小説が読まれるようになりました。そのころはもう8割方、大半の本にルビが振ってありました。ルビと漢字がセットになっている文章を目にすることで、多くの人が漢字やさまざまな言葉を覚えていくという効果もあったのです。
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【ルビは戦後「不遇の時代」に入り…】
