タイパ重視の若者たちが「ゾス!」の熱狂に酔う不条理、経営学者は「ザ・ノンフィクション」炎上回をどう見たのか【前編】

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この学生の眼には戸惑いだけが残った。二項対立でしか現象を見られない思考は、悪しきポピュリズムとの親和性が高い。「ブラック企業かホワイト企業か」という二極化された発想で職場を選ぶことも、その延長にある。

さらに事を深刻化させているのが、生成AI(人工知能)の存在だ。ユーザーの話に合わせるように設計されているため、事実に基づかない情報を、あたかも正しいかのように捏造してしまう。「ハルシネーション」という現象だ。これにより、短絡的思考がより補強されかねない。

SNSだけを頼りに就職活動をしている学生にも出会った。話を聞くうちに、接触している会社にうまくダマされていると気づいた。その学生が大阪の自称コンサルタント会社へ行ったところ、「入社を希望するなら研修を受けてください」と言われ、高額な研修料を請求された。「お金がない」と言うと、「ローンを借りればいい」と消費者金融のATMまで連れていかれたという。

「その会社はおかしい、やめたほうがいい」と筆者が忠告しても、まったく聞く耳を持たなかった。会社説明会に参加するようなオーソドックスな就職活動をしていないのかと問うと、「周りがキャリア支援課を通して就活しているので、同じように流されたくない」と答えた。同調圧力に流されやすい一方で、理想は「個性を大切にする自分」なのだ。その矛盾に、本人は気づいていない。

「SNS就活」に付きまとう“落とし穴”

この一件は、SNSだけを頼りにした就活の危うさを表している。彼が「スタートアップ」(または「ベンチャー」)を標榜するコンサルタント会社にひかれた理由は、社長が20代半ば、社員も20歳前後ばかりだからだという。

同世代の人たちが「サークル活動」のごとく、「楽しく」働く、「若々しい」雰囲気が気に入ったとのこと。この会社に入れば、いずれ、ここの社長のように若くして起業できるだろう、と夢が膨らんだようだった。

この学生だけでなく、近年、各大学がアントレプレナーシップ教育に力を入れているため、「スタートアップ」「起業」というキーワードに敏感に反応する学生が増えている。

大企業でも黒字リストラが話題になる昨今、1つの会社にしがみつくよりも、「いつかは起業」という夢を持つ気持ちはわかる。とはいえ、一部の大学生を除き、実態は「将来は社長になりたいで~す」といっている小学生の心理と変わらない。

次ページ学生に「何がしたいか」と問うと?
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