タイパ重視の若者たちが「ゾス!」の熱狂に酔う不条理、経営学者は「ザ・ノンフィクション」炎上回をどう見たのか【前編】
人生経験が乏しい20代同士が絶対的な上下関係を築き、飲み会の場にまで同調圧力が及び、静かにしていれば「ノリが悪い」と責められる。そうした構図は、未熟で世間知らずな縦組織である大学のサークルでもよく見られる。集団の内と外を鮮明に切り分け、内部の価値観を絶対化することで、その中にいる人は次第に集団の論理に取り込まれていく。
注目すべきは、こうした環境に自ら飛び込む若者の一部が、必ずしもダマされた被害者とは言い切れない点だ。
ロックコンサートやアイドルグループのライブ会場で、皆が一斉に同じ方向を向き歓喜する姿は珍しくない。「陽キャ」と称される明るさを演じ、群れたがるパーティー好きな「パリピ」と呼ばれる人たちの行動も、大声で叫ぶ「ゾス!」の朝礼と本質的に同型だ。
こうした群れたがる傾向は、若者に限った話ではない。ゴルフ接待の場で「社長、ナイスショット」と声をそろえて盛り上げるシニア層の姿も、ライブ会場で同じ掛け声を連呼するファン心理に通ずるものがある。
ただし、シニアはその同調が処世術であることを自覚済みだ。対して若者の場合、それが一定期間しか従事しない定型的な仕事であるにもかかわらず、一生使える職能を磨いていると錯覚しがちである。熱狂を演じているのではなく、熱狂そのものに飲み込まれてしまうのだ。
若者のタイパ志向が生む不条理
このような組織に飛びつく若者の心理には、タイパ(時間対効果)志向が色濃くにじむ。効率的なキャリア形成を求める意識が、「ここに入れば早く成長できる」「強くなれる」というわかりやすい物語に吸い寄せられる。
筆者は大学教授という仕事柄、就活用に繕った「お化粧をした若者」ではなく、素の姿を見せる「すっぴんの若者」と向き合う機会が多かった。かつて4年間在籍した神戸の私立大学の大教室で講義をしていたとき、政治関連のテーマに関して話していたわけでもないのに、手を挙げ、「先生は右翼ですか、左翼ですか」と問いかけた学生がいた。
そこで、「物事を右か左かといった二項対立だけで捉える考え方には違和感がある。経営学は、複雑に絡み合う組織や人間の行動を扱う学問であり、単純にAかBかで割り切れるものではない。データ分析など科学的な手法は重要だが、実際の経営は現場の状況や人間関係、時間の流れの中で形成されるプロセスであり、必ずしも理論どおりには進まない。その意味で、経営には科学だけでなく、文脈を読み取りながら判断するアートの側面が不可欠である」と答えた。



















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