言語で人間に勝るAIが「図」を描けない理由。元コンサル教授×「抽象」のプロが「『考える』を考える」対談【前編】

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平井:紙の2次元性を担保したいのが、私がアナログにこだわる理由かもしれません。その意味では、図や言葉を書く場所にも意味があります。1枚の紙の右上のほうに書いたか左下に書いたか、そういう位置情報も記憶と結びついて、後で思い出しやすくなります。1枚の紙が、思考の見える化を助け、その思考の全体像や論理と対話できるのが大事なのかもしれません。

英語の本に概念図が少ない理由

細谷:平井さんはこれまで「図で考える」をテーマとした著書を何冊も出されています。それで伺いたいのは、英語圏の本って図が極端に少ないですよね。人文系の本はもちろん、自然科学系でも「概念図」のようなものはほぼない。

平井孝志(ひらいたかし)筑波大学大学院ビジネスサイエンス系国際経営プロフェッショナル専攻教授。ベイン・アンド・カンパニー、デル、スターバックス コーヒー ジャパン、ローランド・ベルガーなどを経て現職(撮影:尾形文繁)

平井:あったとしても分析結果を示すグラフや表で、概念を整理する図はほとんどないですね。

図でうまく整理しているのは、相当エポックメイキングな論文か、偉い人の論文ぐらい。駆け出しの人が図で概念を語っても相手にされない印象があります。

細谷:具体的な物事を抽象化して、わかりやすくするためのツールとして「言語」「数式」「図」の3つがあるとすると、英語圏は圧倒的に言語に頼っている。

数式はグローバルですが、シンプルな図解という手段をあまり使わない。それが不思議です。おそらく図が幼稚に見える、あるいは言語のほうがアカデミックというイメージがあるのでしょうか。

ただし、言語は解釈の自由度がものすごく高い。後から「この人は実はこう言いたかった」という解釈が生まれるのは、そのためです。哲学者の著作にはそういう後付け解釈が大量に出てきます。

でも、自然科学者の数式について「実はこう言おうとしていた」はまずない。数式は解釈の自由度がほぼゼロで、言語は自由度が高いということです。抽象化のツールとして、図はたぶんその真ん中ぐらいじゃないかと思います。

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