新NISAスタートを翌年に控えた23年の光景をよく覚えている。金融機関は言わずもがな、マネー誌やネット媒体でも「新NISA特集」が花盛り。みんなで新NISA神輿を担ごうという、お祭り状態だった。
預貯金の世界では、そろそろマイナス金利が解除されるかというタイミングとはいえ、コンマはるか下の低金利。「貯蓄していてもお金は増えない、NISAで長期投資するのが正解」が、マネーリテラシーが高い思考だと感じさせる舞台が整えられた。
そう、「NISAをやらないなんて、マネリテが低いんじゃないの」的な空気に満ちていたのだ。誰だって、「リテラシーが低いヒト」とは思われたくない。よくわからないまま、NISAを始めなくてはと焦る。
加えて、日本人はとかく「みんなやっているよ」ムーブメントに弱い。さらに言えば「みんながNISAを始めてトクしているらしい。自分だけやらないでいると損をする」というのは耐え難い。厄介なことに、貯蓄がきちんとできていない人ほど「投資ならお金が増えます」というトークに心が傾いてしまうものだ。今はまったく貯まっていないが、投資なら相場次第で一発逆転できるんじゃないかと。
いやいや、お金に一発逆転はない。すぐに儲かる方法もない。そういう話は詐欺を疑えと声を大にしたい。が、人間は楽して儲けたいと考える生き物だ。わが家の現状を把握しないまま、NISAの枠いっぱいに積み立てなくてはと突き進む人は一定数いる。
膨らんだカードローンをこれからどう返せばいいかと相談された相手から、「NISAをやろうと思うんです。やったほうがいいですよね」と聞かれたこともあるくらいだ。「お金を増やしたいなら投資すべき」は、時に罪深い。
以前よりあった「積み立て貧乏」という現象
「積立額が今の生活を圧迫するほどなら、額を減らせばいい」というのも、まったくその通りだ。しかし、これも簡単ではない。NISA貧乏が囁かれるよりもずっと前から、「積み立て貧乏」という現象があった。筆者は雑誌編集者時代に家計診断ページを担当したが、そこで遭遇したのがこのパターンだった。
先に書いた一発逆転思考とは真逆で、これに陥る人は家計に対する責任感が強く、かつ努力家の人が多い。先取り貯蓄を欠かさず続け、積立額も多めで頑張っている。貯蓄の残高もそれなりに積み上がっているようだ。


















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