超音速ミサイルが暴いた「絶対防衛」の虚構 矛も盾も弱体化しつつあるアメリカ軍事力の行方

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2021年に出版されたイギリスのジャーナリストであるアンドリュー・コクバーンの『戦利品:権力、利益、そしてアメリカの戦争機構』(Andrew Cockburn, The Spoils of War: Power, Profit and the American War Machine, Verso, 2021、未邦訳)という書物の序文で、このハミルトンの言葉が引用され、腐敗したアメリカの状況、とりわけアメリカ軍の内実が抉(えぐ)りだされる。

コクバーンは、同書でけっして野心的大統領について語っているわけではない。むしろここ最近のNATO(北大西洋条約機構)による東方拡大と軍事産業の拡大について語っているのだ。その背後には野心的政治家と軍事産業との結びつきによって生まれる軍拡競争がある。タイトルに戦利品とあるのは、次のような奇妙な逆転現象から名付けられている。

爆撃機とブーツ:戦場で見られる逆転現象

序文に朝鮮戦争のアメリカ軍兵士の話がある。圧倒的に優位な爆撃機に膨大な資金を投入するアメリカ軍の兵士が、冬の戦争中、敵の兵士が塹壕に残していたソ連製の防寒ブーツを見つけて狂喜して喜んだという。巨大な生産量を誇るアメリカは、高度な武器開発に割く予算はあっても、冬用の防寒靴に割く予算はなかったのだ。

巨大な生産力のアメリカと弱小な北朝鮮、極めて非対称である。しかし、こと兵士の日常的防寒具に関しては、逆の非対称が生じていたのである。

現在、圧倒的に優位だといわれるアメリカ軍の武器能力にも、同じような非対称が存在している。ミサイル能力、しかも超音速ミサイルである。

2018年にロシアはこれを完成させた。この恐怖の兵器に対し、アメリカはミサイル防衛網に莫大な予算を投じたというのだ。

まさにどんな盾をも射貫く超音速ミサイルに対し、そうした矛に耐えうるミサイル防衛網の開発に莫大な予算をかけたというのである。同時に超音速ミサイル開発にも莫大な予算を計上したのだが、今のところ、この分野では後れているという。しかもドローン生産の80%を中国が占める中、ミサイルとドローンに関する限り、アメリカの軍事的優位性は低下している。

しかもこれらの生産価格は、アメリカと比較にならないほど安価だという。現に数百ドルのミサイル攻撃を、100万ドルのミサイルが打ち落とすという非経済的不均衡が生じている。

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