短納期開発の圧力、アクティビストの台頭… 日本が「モノづくりで勝てなくなった」根本理由

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そこで25年、ダイハツはトヨタとの関係性を根本から見直しました。

海外事業の開発・認証責任はトヨタ本体が持つことになり、海外向けの小型車開発などをトヨタ本体に移管し、ダイハツは身の丈に合った「軽自動車」への原点回帰を宣言。これにより、自社のリソースを超えた過大な開発負担から解放されたのです。井上雅宏(まさひろ)社長(在職:24年3月—)の下、ダイハツは軽自動車を中心とした原点回帰を宣言し、社内に「考動館(こうどうかん)」を設立して、全社員が再発防止を誓う場としています。

トヨタでもエンジンの出力試験における不正が発覚し、24年を通じて国土交通省に四半期ごとの再発防止策進捗報告を行っています。再発防止策の中核は「開発部門と認証部門の完全な分離」です。開発スケジュールの圧力が認証への不正につながらない仕組みを構築したのです。

失われた信頼の回復には長い時間を要しますが、この苦い経験を糧に、日本企業は「真の品質」とは何かを問い直し始めています。

「日本経営」は、世界標準に向かっているのか

日本企業が競争力の「ガバナンス(企業統治)」の不全の象徴的な出来事が、東京証券取引所(東証)による「PBR1倍割れ改善要請」です。PBRとは「株価純資産倍率」の略で、株価が企業の純資産の何倍で取引されているかを示す指標です。PBRが1倍を下回るということは、「この会社は解散して資産を売却したほうが、株主にとって得になる」と市場が評価していることを意味します。

2023年3月、東証は上場企業に対し「資本コストや株価を意識した経営」を実現するよう要請しました。そして25年3月、プライム市場の上場維持基準に適合しない企業に対する「経過措置」が終了し、基準を満たせない企業は上場廃止になるプロセスが発動されることになったのです。

25年7月時点で、プライム市場の90%を超える企業が資本コストや株価を意識した経営に関する開示を行い、そのうち60%以上が開示内容を「更新」しています。多くの企業がROE(自己資本利益率:企業が株主から預かった資本を使って、どれだけの利益を生み出したかを示す指標)目標を8%以上に設定し、自社株買いや増配といった株主還元策を具体化しています。

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