キンコン西野の『プペル』新作を"色物扱い"できぬ理由 "お騒がせ芸人の作品"イメージ完全払拭し、巨大IP転身の可能性も

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プペル
(写真:『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』(C)西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会)

今作は、骨太なサスペンス調の人間ドラマが骨格になっており、子ども向けだけではない物語に込められたメッセージがある。

今作のキーパーソンになる、人に化けた植物の精霊・ナギが、物語の前半に人気バンド・HYの名曲「366日」を歌うシーンがある。その歌には、愛した人との別れを受け入れられない苦しみと、その人を思い続ける強い愛情が込められている。

今作はルビッチの大冒険の裏に、悲しみから立ち直れない男が次に進むための物語がある。そこには、相手のことを思って苦しむ彼の苦しさと切なさが満ち溢れる。

同時に、彼のために勇気を振り絞るルビッチの心の奥底にもまた、プペルを失った心の傷があることが投影される。前に進めない彼の姿は、ルビッチ自身でもあった。

物語の後半で、ナギの歌が心に沁みてくる。そして、彼女がこの歌を歌ったもうひとつの意味が、次第に形を成していく。苦しむガスの背後には、もうひとつの深い思いがあった。それがこの物語の芯になることがラストで明らかになる。

そこで描かれるのは、会えなくなった人や、遠くの大事な人を思い続ける愛の物語だ。相手を信じて待つことの意味、そこにある強い思いの大切さを観客に問いかける。

後半は、小さな心を痛める子どもの涙に心を揺さぶられる。涙なしには観られない。しかし、その苦難を乗り越えたときのルビッチはカッコよかった。少しだけ大人になっていた。

今作は、泣ける大人のラブストーリーと、少年の成長物語が巧妙にリンクした名作だ。ラストシーンには、大きな感動が待ち受ける。

この先のIP展開が新たな局面を迎えるか

今作には、昨今の社会に向けた西野亮廣のメッセージがある。混乱を極める世界情勢のさなか、常に誰かが誰かを攻撃するSNS社会に身を置くわれわれに、相手の気持ちを慮って、相手に寄り添うことの大切さを問いかけている。

子ども向けの冒険物語のなかに、人への優しさに欠ける世界への疑問と怒りが埋め込まれている。

もちろんその内容は、子ども向けのエンターテインメントとして十分楽しめるファンタジー大作だ。日本を代表するアニメスタジオの最新のクリエイティブの粋を堪能できる。

プペル
(写真:『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』(C)西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会)

今作で描かれる物語には、前作とは異なる新鮮さと社会性がありながら、ストーリーの根底で両作はつながっている。前作から転調してはいるのだが、それを回収して完璧なラストに落とし込まれる。そこには、前作を超える大きな感動と深い余韻が待ち受けている。

今作は、前作を上回るヒットになることが期待される。同時に、プペルがより強固な拡張性の高いIPとなり、この先のメディアやプロダクト展開が新たな局面を迎えることも予想される。

その先には、劇場版アニメの次作もあるだろう。それがいまから楽しみだ。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Yasuyuki Takei

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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