国家情報局の創設は国を誤らせないか 情報員の能力不足と組織の忖度体質が招く深刻なリスク

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自衛隊の場合には、秘密保持でさえも「なあなあ」の可能性がある。意外にも、情報職域は口が軽い。また秘密保持から規制されている情報区画への立ち入りも、普段は「2週間前に申請」というが、自分達が困ると「手続きなしでいいので、すぐ来てくれ」という。その内容も、無難な例で示すなら「エアコンが故障した」程度である。

自衛隊で発生したスパイ事件を振り返ると、多くの場合は当の情報職域から逮捕者が出ている。自衛隊全体の0.1%いるかどうかの情報士官が、スパイ事件の3回に2回は当事者となっている。

忖度してきた実績

第3は、忖度(そんたく)の実績である。これも情報組織の強化はむしろ害となるのではないか。その不安を払拭できない要因である。情報機関の創設はインテリジェンス機能の向上を目的とする。簡単にいえば情勢を判断する能力である。情報を集めるだけではなく、それに基づき判断する能力の向上である。

ただ、今まで各省庁として出した情勢判断からすれば忖度ばかりである。情報に基づいて真摯に検討した成果を情報組織が出すのではない。上にあたる省庁や政府が持ち出す結論に沿った情報作業をしているようにしか見えない。

自衛隊から例を出せば、かつての「ソ連侵攻論」が好例だ。冷戦時代には、防衛庁は「ソ連の対日侵攻はある」としてきた。冷戦終結後のソ連崩壊期やロシア迷走期にも「その力は失われていない」と主張していた。だが、これは防衛費増額や日米安保強化、陸自権益保護の都合のために作為した結論である。

そして自衛隊の情報組織はそれに唯々諾々と従った。少なくとも公に否定した形跡はない。事情を知る立場からすれば、実態はまったく逆である。それにもかかわらず、間違えた結論に奉仕した。

実際のところ、ソ連には日本侵攻の力はなかったというのが多数派の見方だ。まず、侵攻に必要な基礎能力を欠いていた。極東部の経済力や鉄道の東向き輸送力、海上輸送力のいずれも貧弱であり、対日侵攻の実施は不可能だったのだ。ヨーロッパでソ連は100万以上の大軍を自在に動かせたが、サハリン(樺太)以東では1万人を動かすのにも苦戦していた。

また、中ソ対立の時代もあり、日本と戦う余力はなかった。中国の国境3000キロメートルに配置した50個師団の補給で手一杯だった。それゆえに、日本との戦いは避けたい状態であった。

そもそも、日本に勝てる見込みもない。日本方面のソ連軍は二線級であり自衛隊を圧倒する力はない。逆に日本による侵攻に備えた守備隊であった。北方領土の配備部隊に至っては事実上の全滅予定部隊である。

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