国家情報局の創設は国を誤らせないか 情報員の能力不足と組織の忖度体質が招く深刻なリスク

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彼らの話に違和感を覚えたことは何度かある。無難な話を選ぶなら、ロシアで発表される天気予報への評価だ。情報部署の者と雑談中に「ロシアは日本と違って外さない。日本は遅れている」との話が出たことがある。

おそらくだがロシアの気象関連情報を調べたのだろう。新聞等で天気予報をチェックし、街頭カメラなどで予報の精度を確認したあたりだ。ただ、結論は間違っている。予報精度は地理的条件で決まるからだ。

地形が単純なロシアでは的中して当然である。比較的単純な気象条件の地域が多い。空気の移動方向と速度、変質を予想する伝統的な気団解析でもよく当たる。だが、日本では簡単ではない。複雑な山岳地形や暖流・寒流の影響を受けるからだ。だから数値予報をしても精度を上げられないケースも多い。

問題は、そういった事情を知らないことだ。内容的には高校で学ぶ地学であるし、情報職域に隣接する気象職域では常識である。仮に知らなくとも、仕事なら下調べをすべき内容だ。

中国への見識も怪しい。基本的な知識を欠いているようにも見える。例えば、今の中国は「中華民国を継承する存在」であることを理解していない。中華民国のうち、中国国民党のさらに一部である蒋介石一派を除く勢力が集まって成立した体制だ。

だが、関係者からは「戦勝国は中華民国であり今の中国ではない」といった発言が出てくる。高市早苗首相の発言への批判を混ぜ返す際に「今の中華人民共和国は日本と戦っていない。戦勝国ではない」とも主張している。中国に詳しいはずの情報出身者が、俗流保守誌などで発表される内容を受け売りした形である。

それからすれば、能力への信頼も難しい。インテリジェンスに必要な判断力はあまり期待できないのではないか、との疑問をどうしても拭えないのだ。

公安調査庁もその程度ではないか。かつてのオウム真理教への破壊活動防止法(破防法)適用に際しては、その質についてマスコミは批判するどころか呆れていたのが実際だった。身内の政界や官界からも信用されていない。「霞が関の盲腸」や「少なくとも公安[警察]は無能とは言われない」といった揶揄からそれが窺える。

情報「コレクター」ではないか

おそらく、自衛隊の情報組織の仕事に従事する者は「コレクター」なのだろう。中国人民解放軍の公式発表や電波や水中音響の周波数やパルス形状、衛星写真や地図や飛行機や軍艦の写真を集めて整理する情報コレクターではないか。

情報職域そのものではないが、防衛研究所の関係者の発言をみてもその印象がある。2023年に亡くなった政治学者で中国分析に定評のあった平松茂雄さんは、中国共産党中央軍事委員会の機関紙『解放軍報』の研究で有名であった。地域研究界隈でも「彼は少しの変化も見落とすことはなかった」と絶賛されている。

ただし、それでも平松さんの判断には無理があった。これも同じ地域研究の人たちは指摘している。1990年代から彼は「今年、中国は台湾の武力統一に着手する可能性が高い。なぜなら中国共産党結成80周年だからだ」といった主張を繰り返していた。

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