よしき(47歳、仮名)は弁護士である。法律事務所に所属し、高齢者福祉分野を専門としていた。入会面談でこの道を選んだ理由を尋ねると、少し照れながらこう答えた。
「母のため、ですね」
高校時代に父親を亡くし、そのあとは母が遺産を切り崩しながら彼を支え、大学からロースクールまでの学費を負担したという。
婚活の希望条件を聞くと、彼は慎重に言葉を選びながら話した。
「今は母と同居していますが、結婚後は別居でも構いません。ただ、何かあればすぐ駆けつけられる距離にいたいんです」
共通する「交際終了」の理由
穏やかで礼儀正しく、職業的にも安定している彼には多くのお見合いの申し込みがきた。お見合いすれば仮交際に進むのだが、2度3度とデートを重ねた頃、女性側から交際終了の申し出が続いた。理由は共通していた。
「母親の話が多い」
「将来、お母さんの介護を担うことになりそうで不安」
「マザコンの印象が拭えない」
本人に悪気はない。ただ、母を大切に思う気持ちが会話の随所に表れ、女性たちは結婚生活のイメージを描けなくなってしまうのだった。
決定的だったのは、まさみ(42歳、仮名)との交際である。3度目のデートで親の老後の話題になった際、彼女はこう話した。
「うちの親は、老後は子どもに頼らないつもりで、施設に入る資金も準備しているみたいです」
その瞬間、よしきの表情が変わった。静かな口調ながら、強い感情をにじませてこう語ったという。
「僕は仕事で施設を多く見てきました。親をああいう場所に送る子どもの気持ちが理解できないんです」
怒りを帯びたその表情に、まさみは恐怖を感じ、交際終了を決めた。母への深い感謝は、彼の誠実さの表れだろう。
しかし婚活の場では、「親を大切にすること」と、「新しい家庭を築くこと」の優先順位が問われる瞬間がある。結婚とは、親への愛情を否定することではない。けれど人生の中心を、親からパートナーへと静かに移せることができるかどうか。その覚悟が問われる。





















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