成長してひとりで行動するようになったコマツ少年は、もうひとつのルートを使うようになった。熱海駅から東海道線で小田原駅まで行き、小田急線に乗り換えて新宿駅に出るルートだ。
「2時間ぐらいかかるけど、そのほうが東海道線で東京駅に出るよりも運賃が安かったんです。お小遣いが少なかったから、自分で行くとなるとどうしても安いほうになっちゃう。だから自分の中では『東京』といえば『新宿』で、『東京に行く電車は小田急線』という思い込みが昔からあった。ひな鳥の刷り込みのようなものですね」
しかもコマツ少年にとっては、東京駅より新宿駅のほうがずっと楽しかった。百貨店の並ぶ東京駅周辺では子どもに買えるものは少なかったが、新宿駅西口の家電量販店にはお小遣いで手が届く商品がたくさんあった。見て歩くだけでもワクワクする。「ヨドバシカメラで初めてウォークマンを買ったんですよ」と、コマツさんは当時を懐かしむ。
進学を機に同郷の友人と喜多見〜狛江エリアで暮らす
19歳になると、御茶ノ水にある東京デザイナー学院(現・東京デザイナー・アカデミー)に進学するため上京。小田急線の狛江周辺に住み、電車に乗る際は喜多見駅を利用した。なぜこの場所だったのか。
「田舎者にとって東京は怖いところです(笑)。だから、少しでもなじみのある路線のそばがいいなと思って。専門学校は御茶ノ水駅にあったので、新宿駅で中央線に乗り換えれば一本で通えます。喜多見駅は各停駅だけど、ひとつ隣は急行の止まる成城学園前駅。通学時間は50分程度でほとんど変わらないうえ、家賃も安かったから決めました」
加えて、もうひとつ大きな決め手があった。少し前に、高校時代の友人が喜多見駅周辺でひとり暮らしを始めていたのだ。知らない人ばかりの東京で暮らすなら、友だちと近い場所がいい。不動産屋を回って見つけたのが、狛江の四畳半風呂なし、家賃2万円の部屋だ。
やがて同じように考えたのか、高校時代の仲間が数名、喜多見〜狛江エリアに引っ越してきた。友だちの部屋を順番に回ってはファミコンなどで遊び、学生寮さながらの日々を過ごした。慣れない土地に気心知れた仲間がいるという安心感は、東京での暮らしを支える大きな力だった。





















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