EUが原子力発電への回帰にかじを切った本当の理由、EUの現実直視を日本はどう受け止めるのか

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EUでは2030年の実用化を目指して、エネルギー安全保障・脱炭素・電力安定供給のため、次世代型原子炉(主にSMR=小型モジュール炉と第4世代炉)の研究・開発を進めている。

とくに中心的な政策枠組みはSMRの実用化で、工場で製造し現地で組み立てることで、建設期間の短縮が見込まれる。出力は50〜300メガワット程度で莫大な設置費用を圧縮でき、小国での設置が可能なうえ、再エネとの補完的関係もいい。

次世代型原子炉の安全性は?

一方、第4世代炉は安全性・燃料効率・核廃棄物削減を目的とした新型炉で、メルトダウンしない設計の高温ガス炉、溶融塩炉(MSR)、核廃棄物削減のナトリウム冷却高速炉(SFR)などがあり、安全性向上、廃棄物削減、脱炭素などエネルギー安全保障の観点から開発が進んでいる。だが、最も欧州が力を入れているのは、技術リスクが低く、2030年代に実用化できる可能性が最も高いSMRだ。

現時点では、EUは2030年代に第1段階として老朽化した原子炉と置き換える形でSMRを導入し、2040年代には第4世代炉を導入することで核廃棄物問題を解決する戦略を持っている。ただ、EUは主電力は排出ガスゼロの再エネに据え、原発は電源の安定供給のために確保し、水素も念頭に置いている。

この方向性に対して、世界のトップレベルの次世代炉開発を行っている日本も、老朽化した原子炉の廃炉と、SMRや第4世代炉の導入に本腰を入れて取り組む時期は確実に到来している。とくに欧州以上に自然エネルギー比率が低い日本では、国際紛争による石油やLNGの輸送経路の切断は死活問題だ。

とはいえ、隣国との関係が良好とはいえない日本は、隣国との協力でエネルギーの安定供給を確保することは困難だ。日本政府は再エネ推進には後ろ向きで、再エネ比率を増やすには時間やコストだけでなく、政治的ハードルもある。理想論で脱原発を進めたドイツでさえ現実主義のフランスのように直面する世界の現実に目を向け、対応する時が来ているのかもしれない。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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