EUが原子力発電への回帰にかじを切った本当の理由、EUの現実直視を日本はどう受け止めるのか

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フォンデアライエン氏の脱原発の転換表明に対して、23年に脱原発を完了し、国内原発の再稼働や新規原発建設を否定しているドイツは25年、それまで脱原発の強い主張を和らげ、中・東欧の原発施設建設を妨害しない立場に切り替えた。

だが、EUの共同資金(EU予算)を原発に使うべきではないとの考えは変えていない。そもそも二酸化炭素が原発以上に排出される石炭による火力発電を残したドイツは、不足する電力を賄うため、フランスの原発で発電された電力を買い続けた。

脱原発国はどう動く?

EUの推進する地球温暖化対策や森林破壊防止、自然エネルギー利用など、環境保全に配慮した経済活動・企業へ資金を提供するグリーン投資に対して、ドイツは今でも原発に使うべきでないという立場だが、「他国が原発を使うこと自体は妨害しない」との立場に軟化している。

とはいえ、反原発をイデオロギー化して戦ったドイツの左派勢力は今でも健在で、石炭発電より原発停止を優先して廃止した国が、原発にEU資金を使うことを認める道のりは長い。

欧州で最も再エネ比率が高いドイツ、原発に否定的なオーストリアを中心に、原発推進シフトに対する抵抗勢力であり続ける可能性は高い。フォンデアライエン氏の打ち出した新たな原発政策では、安全性確保を大前提に、加盟国の協力による域内全域のシンプルなルール作りを目指すこと、核心的な技術導入のための投資環境の整備を行う。研究、試験施設、そして核燃料の欧州バリューチェーン構築の分野に関わる人材育成という3つの要素を打ち出している。

とくにシンプルなルール作りで国境を越えた実験協力、投資の動員の必要性で、革新的な原子力技術への民間投資を支援するためグリーン投資に組み込むことが想定され、ドイツは早速反対する可能性がある。

またEUは「2億ユーロ(約365億円)の保証を設ける」ことを発表したが、同資金は、EUの排出量取引制度から調達され、「低炭素技術への投資リスクを軽減するだけでなく、他の投資家にも参加を促す」しているが、ドイツ企業が参加するか疑問視されている。

次世代原子炉のビジネスモデルは規模を必要とし、欧州の国境を越えた協力が不可欠としている。一方、高度な原発技術を世界に売り込み、膨大な開発コストを補うという考えでも、EU域内どころか、世界に原発を拡散することにドイツやオーストリアが協力するかは疑問視されている。

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