EUが原子力発電への回帰にかじを切った本当の理由、EUの現実直視を日本はどう受け止めるのか

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欧州は日本ほどではないにしろ、自前で賄うほどのエネルギー資源を持っていない。EU全体で自前で賄えるエネルギーは約40〜43%で、約57〜60%は輸入に依存している。つまり、日本のエネルギー自給率の13%(2022年)に比べれば倍以上とはいえ、5割を下回る。

EU域内で自前で賄えるエネルギー源は、再生可能エネルギーが全体の約48%、原子力が約28%、石炭が約15%、天然ガスが約5%、石油が約3%で、近年の脱炭素の動きで加速した再エネの風力、水力、太陽光と原子力が占めている。

原発回帰に至った差し迫った現実

天然資源の自給率は石油と天然ガスを合わせても15%程度で、原発のためのウランは、ほぼアフリカから輸入している。結果的にイスラエル、イラン紛争など世界が不安定化する中、欧州最大の重厚長大産業を持つドイツはロシア産天然ガスの輸入を断念したために液化天然ガス(LNG)を輸入するために、港を急ピッチで整備した経緯があり、エネルギーの安全保障は喫緊の深刻な課題となっている。

一方で、あくまで脱炭素(カーボンニュートラル)をめざす世界一の優等国を維持したいEUは、再エネ転換を最優先したいところだが、コストも時間もかかる中、世界のあちこちで紛争が起き、エネルギー源の輸送が滞る中、域外からの輸入ではエネルギーの安定供給は困難な現実を突きつけられている。

そこで浮上したのがカーボンニュートラルには一歩及ばないものの、安価で安定供給が見込める原発の復活だ。これは最善ではないにしろ、選択可能な道として示された形だ。今月10日からパリで開催された60カ国以上から代表者が参加した原子力サミットでの演説で、同委員長は「1990年にはヨーロッパの電力の3分の1が原子力で賄われていたが、今日ではその割合はわずか15%近くにまで低下している」と述べた。

さらに石油やガスの生産国ではないEUにとって「現在の中東危機は、それがもたらす脆弱性を如実に示している」とした。そのうえで原発と再エネとを組み合わせることで、安定供給をもたらし、最も信頼性の高いシステムを構築できると強調した。

つまり、ウクライナ危機によるロシア産化石燃料依存からの脱却、アメリカのトランプ政権が迫る安全保障上のアメリカ依存からの脱却という現実に、昨今の中東危機がエネルギー供給網の寸断を招き、EU域外依存そのものの見直しから導き出された結論というわけだ。

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