総合商社の「エース営業」が課長になって病んだワケ 「1カ月でなんとか…。会社のみんなに申し訳なくて…」
言うまでもなく、人の価値は多面的なものです。会社で成果を出せていなくても、たとえば釣りがすごくうまいかもしれませんし、スポーツなら一番をとるほどかもしれませんし、手先がすごく器用かもしれません。
あるいは、何か得意なことがなかったとしても、すごく優しくて愛される人柄かもしれません。
職場での価値はあくまで人生の中の一側面に過ぎませんから、会社を一歩出れば、忘れていいはずのものです。しかし、なぜかわたしたちは、社員としての価値と、人間としての価値を混同しがちです。
そして、真面目な人ほど、成果を出せないことで自分の人格までも否定してしまいます。「こんなこともできない自分はダメなやつだ」と思い込みます。
しばらくは休むのが仕事
うつであることを告げられて肩を落とす坂本さんに、わたしは話を続けました。
広岡:わたしは、うつ病には真面目さ、責任感、共感性が高い人ほど抱えやすい側面があるとお伝えしています。坂本さんも、その生き方の誠実さゆえに無理を重ねてしまったのだと思います。
うつ病になる人は社会に不適合な人ではなく、社会に順応できる人たちです。順応できるからこそ、会社から期待されると、よけいに頑張ろうとするところがあります。
でも、競争社会の中での仕事は厳しいですよね。この目標ができるようになったら、次はこの目標。会社は常にギリギリのところまで求めてきますから。でも、どこかの段階で応えられなくなるときがあります。
坂本:そうですね……。
広岡:結果、パフォーマンスが落ちて評価が下がると自信をなくし、将来を悲観するようになります。会社や周囲の手のひら返しの対応に、人を信じられなくなり、仕事を楽しめなくなります。
坂本さんのような症状を訴えてくる患者さんは、ほとんどそうです。うつ病は、立派な生き方をされてきたから発症する病なんです。
坂本さんの隣で話を聞いていた奥さまが、今後のことについて質問してきました。
妻:夫はどれくらい休むことになるのでしょうか?
広岡:坂本さんの症状を聞くと、いまはまったく働ける状態ではないようなので、しばらく会社を休むのがいいと思います。しばらく会社から離れて心の疲労をとることから始めましょう。
妻:どれくらいでしょうか?
広岡:3カ月は休職したほうがいいでしょうね。
坂本:1カ月でなんとか……。会社のみんなに申し訳なくて……。
広岡:焦らないことです。いまの坂本さんがやるべきことは、蓄積した疲労をとることです。そのためには時間が必要です。とれないまま仕事を始めると、症状を悪化させることになります。
休むことに罪悪感を覚えておられるようですが、そんな必要はありません。休むことは、怠けることではありません。これからの人生を充実したものにするために、いまはエネルギーを蓄える時期だから休むのです。
わたしは、患者さんに“休息を学ぶことは、人生を学ぶこと”とお話ししています。これからしばらくは、休むのが仕事だと思ってください。
坂本:休息を学ぶ、ですか……。
広岡:そうです。坂本さんにもこれから少しずつ伝えていきますからね。





















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