総合商社の「エース営業」が課長になって病んだワケ 「1カ月でなんとか…。会社のみんなに申し訳なくて…」
あるメンバーは、何が気に食わないのか、ことあるごとに坂本さんに反発します。
別のメンバーは、何かにつけクライアントとトラブルを起こします。事前にクライアントにひと言伝えればいいことを伝えておらず、それが原因で「おたくの会社はどうなってるんですか!」というクレームの電話が坂本さんのところにかかってきます。
その責任はすべて、上司である坂本さんが負うことになります。
メンバーの代わりに売上をつくる、クライアントのトラブル対応、それから課長としての本来の仕事……。働き方改革といわれ、長時間労働が敬遠される時代ですが、坂本さんは夜遅くまで働く毎日が続きました。
体が疲れてくると、気持ちも内向きになります。坂本さんも次第に自分を責めるようになったといいます。
会社は、「課長になる人はそれくらいできて当たり前」という前提で、坂本さんにあれこれ注文してきます。そして、マネジメント職をそつなくこなす同僚と比較して、評価を下します。それが、坂本さんをさらに追い詰める結果となってしまいました。
「比較」と「成果」が人を追い詰める
奥さんと一緒に私のクリニックを訪れた坂本さんは、自分に何があったのか、肩を震わせながら小さな声で話してくれました。その様子から、坂本さんが心身の限界に達しているのは明らかでした。
広岡:治療を続けると死にたいほどのつらい気持ちは必ず消えていきます。坂本さんの心の病は過度の精神と脳の疲労によるうつ病です。
坂本:やっぱりうつ病なのですね。
広岡:この病は治療をすれば必ず良くなります。
うつ病の患者さんの治療では、初診時に入院治療をするか、在宅でご家族とともに暮らしながら回復を目指すかの判断をします。
坂本:入院はしたくないです。
妻:わたしも、できれば自宅で、家族と一緒に回復を目指したいです。
広岡:坂本さん、これは精神の疲労です。精神が酷使されて、働けなくなっている状態です。休めば必ず回復しますから、焦らず治していきましょう。
坂本:……はい。
坂本さんのように、ボロボロになってもまだ自分を責める患者さんを見ていると、いつも「人生とはなんと不条理なのか」と思ってしまいます。
そして、さらに不条理なのは、現代社会の歪みといっていい「比較」の問題です。
わたしたちは、子どもの頃から常に誰かと「比較」され、「成果」を挙げない人は非難の対象になります。
しかし、よく考えていただきたいのは、仮にある場面で成果を出せなくても、それはその人がダメな人間だということにはつながらない、ということです。あくまでその会社の、その部署で、上司が求める結果を出せなかった。ただそれだけの話に過ぎません。





















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