戦略なきアメリカのイラン攻撃、皆が納得した「パウエル・ドクトリン」を完全無視した「トランプ流戦争術」の危うさ

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もっともこういう知恵は、すぐに風化してしまうものである。そうでなくても、勝利の後には「慢心」が来るものだ。ひと世代(30年)もたつと、パウエル・ドクトリンは省みられなくなり、03年のイラク戦争ではブッシュ・ジュニア政権は「戦争に勝って統治に失敗する」ことで痛い目を見る。やっぱり難しいものなのだ。

「体制転換」に失敗、「国民的な支持」も乏しいイラン攻撃

今回のトランプ政権によるイラン攻撃もまた、このパウエル・ドクトリンを完全に無視している。戦争目的は曖昧であり、当初は「アメリカの安全保障のため」とか、「イランの核開発を防ぐ」などと言っていた。「レジームチェンジ」とも言っていたが、最高指導者アリ・ハメネイ師を倒したところ、その次男が後継者になってしまった。それでは「体制転換」にはなりませんわな。

「国民的な支持」も乏しい。The Economist誌によれば、イラン攻撃に賛成しているのは米国民の38%にすぎず、トランプ政権支持率とほぼ同じであるらしい。面白いことに、「自称MAGA派」の人たちは85%がイラン攻撃支持なのだそうだ。

「圧倒的な兵力」という条件は満たしているようだが、イラン軍が飛ばす1機数万円程度のドローンによる反撃を、米軍基地が1機数億円もの精密誘導弾で撃ち落としている「図」は、何とも奇妙な非対称性がある。防衛産業は利益追求のために兵器の「質」を追い求めるものの、戦場においては兵器の「量」も重要であるらしい。やはりどこかに根本的な誤算があったのではないだろうか。

そして「出口戦略」がはっきりしない。イラン軍の抵抗は筋金入りで、これまでは「禁じ手」とされてきたホルムズ海峡の封鎖に打って出た。こうなると世界経済を人質に取られたようなもので、アメリカとしても非常に出方が苦しくなった。いや、日本経済もいきなりの展開にピンチ到来である。

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