戦略なきアメリカのイラン攻撃、皆が納得した「パウエル・ドクトリン」を完全無視した「トランプ流戦争術」の危うさ

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なんだかんだ言って、中東ではかなりの頻度で武力行使を行っている。しかも過去のパターンからは、以下のような7つの法則性を見いだすことができる。

1. 短期的視野で即興的に決断する
2. 専門家の意見を聞かず、地域の特殊性や歴史も考慮しない
3. 国内世論や支持基盤である「MAGA派」の意見もさほど気にしていない
4. 「安全に勝てる機会」は逃さず、軍事的成果は大いに誇る
5. 空爆が主体で、地上軍投入などリスクの高い作戦は論外である
6. 景気と株価に影響しない範囲で実施する
7. 自由自在に幕引きを図る(いざとなったら「TACO」る)こと
(「TACO」=Trump Always Chickens Out.=トランプはいつも最後に日和る)

パウエル国務長官の「軍事ドクトリン4カ条」とは

こうして振り返ってみると、なるほどThe Economist誌が言う通り「戦略なき戦争」という言葉がピッタリだ。かつての米軍は、開戦時の心得として「パウエル・ドクトリン(基本原則)」を重視していた。元陸軍大将にして、ブッシュ・ジュニア政権で国務長官を務めたコリン・パウエル氏が提唱した軍事ドクトリンである。定義はいろいろあるのだが、以下の4カ条がわかりやすいだろう。

①Clear Objectives(明確な目的)
②National Consensus(国民的同意)
③Massive Forces(圧倒的な兵力)
④Exit Policy(出口戦略)

要するに、戦いを始めるときは、①「何のためか」を事前に明らかにしておき、②国内の支持を確実なものにして、③兵力や武器弾薬は大差で敵を圧倒し、なおかつ④兵を引くタイミングをあらかじめ考慮しておく。この4カ条を満たしておけば、兵士たちは後顧の憂いなく戦えるというものだ。

「パウエル・ドクトリン」は、ベトナム戦争の教訓から誕生した。1991年の湾岸戦争は、このドクトリンに沿って遂行された。当時のブッシュ・シニア大統領は国連決議を取りつけ、多国籍軍を編成し、国際世論を味方にしてイラクに攻め込んだ。そしてサダム・フセインを倒す直前で兵を引いた。結果として短期間に終わり、兵力の犠牲も少なかった。圧倒的な軍事力を行使する際のお手本のような戦い方であった。

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