イラン戦争の基盤を支える汎用AI、対イラン軍事作戦が暗示するSDW(ソフトウェア・デファインド・ウォー)という未来
2月28日、アメリカとイスラエルによる対イラン軍事作戦「エピック・フューリー(Epic Fury)」が開始された。
作戦の全容が明らかになるにつれて、浮かび上がってきたのは、通常兵器の威力でもステルス戦闘機の性能でもない。テヘラン市内の交通監視カメラ映像がハッキングされ、その映像データが大洋を越えてCENTCOM(米中央軍)の司令部に流れ込んでいたという、まるでテレビドラマのような事実だった。
筆者は地政学者や軍事ジャーナリストではない。本来なら、AIやクラウドサービス、半導体、デジタルデバイスなどテクノロジを評価するジャーナリストである筆者には無縁の世界だ。しかし、この戦争はいわば「SDW(ソフトウェア・デファインド・ウォー)」とも呼べる、テクノロジと極めて密接につながる戦争であることが明らかになってきている。
最近の自動車業界では、自動車の体験価値をソフトウェアで定義する「SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)」という言葉が定着しているが、ソフトウェアが戦争全体を大きく変えているのだ。
ではどのように変えているのか。その真相とAI業界に与える影響を読み解いていくことにしよう。
キルチェーンとは何か
カメラが捉えた車両の動き、人の流れ、道路の封鎖パターン。いずれも断片的な映像にすぎない。衛星画像、通信傍受記録、SNSをはじめとするネット上で公開されている情報。これらも単独では大きな意味を持たない断片的な情報だ。
しかし、これらを強力な推論エンジンに入力するとそこに”意味”が生まれてくる。米軍はアンソロピックの大規模言語モデル「クロード」の推論能力を、実戦の「キルチェーン」に組み込み、実戦に初めて投入していた。キルチェーンとは米軍が体系化した軍事用語。敵の標的を「発見(Find)」してから「破壊(Finish)」に至るまでの一連のプロセスを、鎖(チェーン)のように連なる段階として捉えた概念だ。
キルチェーンは米軍が体系化した軍事用語。敵の標的を「発見(Find)」してから「破壊(Finish)」に至るまでの一連のプロセスを、鎖(チェーン)のように連なる段階として捉えた概念だ。
さらに驚かせたのは、この作戦でクロードがフル稼働していたまさにその数時間前、トランプ大統領とヘグセス国防長官が、アンソロピックを「急進左派の脅威」として連邦政府システムから排除すると宣言していたことだ。同社は国防総省が求めるクロードの利用条件を受け入れなかったことで、アメリカ籍の開発企業であるにもかかわらず、国家から敵視された。
大きな矛盾構造に見えるが、一方でAIが戦争に与える本質的な影響を映し出している。国家の安全保障上、重要なシステムに組み込まれたAIの稼働に対して条件を付けることを“反逆”とみなすほどに、軍事力とAIは密接な関係にある。





















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