私が恐れおののいたバカでかい道路は「カンパチ」と呼ぶことを、街に住み始めてから知った。物件選びのときには、幹線道路の無機質な雰囲気に圧倒されたものだが、まもなくして、駅前の明るい「ちとふな」とは、また違う寂寥感も味わい深いと気づく。
車が盛んに往来するのを眺めながら、同じように手持ち無沙汰で歩く人とすれ違うと、至るところに生活があるのだと勇気づけられる思いがした。やがて週末になれば、その環八を原付で北上して、ジムに通うようになる。
思っていたのと違う「憧れのマスコミ」
私が庶民的な「ちとふな」の街にどっぷりとはまった理由は、2つあった。
1つは出版社の仕事が、思いのほか暇だったことだ。夢の編集者にはなったものの、大学を卒業したばかりの私に任せられる仕事は少なかった。
大手出版社のように研修制度があるわけでもない。月刊誌と書籍の両方の編集を抱えて、忙しそうな先輩たちに「何かありますか?」と聞いても「大丈夫。もう上がっていいよ」と言われるばかり。
今から思えば、「仕事に慣れてくれば、どんどん任されるようになるから、帰れるときに帰っておきなさい」という気遣いだったのだろう。しかし、徹夜も辞さない覚悟で出てきた私にとっては「こんなことでいいのか」という不安しかなかった。
まだ夕方の早い時間に小田急線に揺られながら「大手に勤めている同じ年の編集者たちは、今日も徹夜なんだろうな」と想像を膨らませながら、虚しく車窓を眺めていたことを今でもよく思い出す。





















無料会員登録はこちら
ログインはこちら