大学教員のトリセツ【応用編】講義はエンタメ重視で「陽キャ」がウケる? 企業とは違う"異文化の世間"と"学会のオキテ"
このような大学では、大学教員は人、それも法律上は成人と子どもの中間的存在である「おども」を相手にしている。楽しい面もあるが、かなり強いストレス耐性と変幻自在な対人能力を持っていなければ務まらない。
現場の教員がこれら一連の対応に追われるのは、現在の大学生だけでなく、その親の世代までもが「楽しい」という価値観を基軸に思考・行動しているからだ。だから、大学も「学び考える場」よりも「楽しい場」であることが優先される。
オープンキャンパスなどを見れば一目瞭然で、楽しいエンターテインメントを前面に打ち出し、受験生集めに懸命だ。講義にもエンターテインメント性を求める。「面白い講義」「面白い先生」が好まれ、おのずと教員はタレント性とプレゼン上手な演技力が求められるようになった。
昭和の歌謡曲には人生の悲哀を歌った暗い曲が少なくなかったが、近年は明るい元気な曲が主流になったように、今は先生も「陽キャ」の人が「受け」がいい。こうした動きの中で当然、向いている役者と向いていない役者がいる。吉本新喜劇を好む客に、小津安二郎監督の不朽の名作『東京物語』を見せても、「暗いな」と不満を覚えるだろう。
マルチタスクが求められる実務家教員
国は「研究大学」を中心に世界水準で競争力を発揮できる研究力を高めようとしているが、一方では、高度な研究をしていても「面白くない先生」の講義が馬の耳に念仏となる大学生がいるという現実も否めない。そうした教員を追い出そうというのではなく、「面白い先生」との共存共栄を図ろうと文科省は考えた。
コンサルタント、シンクタンク研究員、マスコミ関係者、企業で働きながら大学院に通い博士を取得した人材などが、実際に大学教員へ転身している。ただし、実務家教員として教壇に立つ現実は、想像以上に複雑だ。
同じ大学の学生であっても、その背景は多様であり、性格、価値観だけでなく、学力、学習習慣、学習意欲にもばらつきがある。授業外での相談、課題の再提出、進路の悩みに対応しなくてはならない。
実務家教員は企業での経験を踏まえて助言することが期待されるが、生活面の不安、家庭環境の問題、心身の問題に適切に対応する合理的配慮といった要素が絡み、単純な指導では対応できない。




















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