大学教員のトリセツ【基礎編】"華麗なる転身"は幻? 「2026年問題」と定員割れにあえぐ《大学業界》の残酷な現実
そこで出現したのが、実務経験を生かして学生に実践的な教育を提供できる「実務家教員」である。
文部科学省が24年7月に公表した資料「高等教育における実務家教員の活用」によると、実務家教員を「専門分野における実務経験(おおむね5年以上)を有し、高度な実務能力を持つ者」と定義している。
この制度が示したのは、研究者と実務家教員の二項対立ではない。むしろ、両者を組み合わせて教育を構築するという発想である。研究者は理論を深め、実務家教員は現場の知識を持ち込む。両者が協働することで、学生は理論と実践の両方を学ぶことができる。制度はその方向性を明確にした。
制度が整ったからといって、実務家教員の役割が単純に定まるわけではない。大学ごとに教育の目的は異なり、求められる役割も違う。研究者と同じ基準で論文を求められる場合もあれば、教育に専念することを期待される場合もある。
実務家教員は、研究者でもなく、非常勤講師でもなく、企業人でもない。大学という組織の中で、実務経験を教育に変換する専門家としての役割が期待されている。
定員割れが目立つ「専門職大学」
実務家教員の長所を生かせる場として、専門職大学院に続いて19年度に「専門職大学」という新しい学校制度が誕生した。学問の教育研究を最大目的とする既存の大学と職業指導をする専門学校のいいとこ取りをした内容になっている。既存の大学に専門職学科を置くこともできる。
専門職大学では専任教員の4割以上、専門職大学院では3割以上を実務家教員とすることが義務づけられており、実務家教員が力を発揮できる舞台として設計された。既存の大学に対しては実務家教員を含むよう努める旨の規定はあるが、割合は示されていない。なお、教員養成学部のみ2割以上と義務づけられている。
当初は期待されたものの、ふたを開けてみると、卒業が国家試験受験資格に直結し就職先が明確である医療系や一部のIT系を除き、多くの専門職大学が学生募集に苦戦している。25年現在、公立3校・私立17校あり、20校のうち14校が定員割れで、さらに9校は入学定員充足率70%未満だった(25年5月2日付「朝日新聞」)。




















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