ある日突然「透析患者」に仕事一筋"50代男性"の悲鳴 「気分が悪い」とクリニックに→即入院→透析開始 心が追いつかず…

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「どうして私が浮気相談を?」と思いましたが、仕方ありません。どうも私は、この手の個人事情に巻き込まれやすいようです。ようやく解放されてひと息ついた後、この長い“訴え”の間に、一度も夫の治療への言及がなかったことに再び驚き、やはりキーパーソンにはなり得ないと改めて思いました。

前途多難な船出にため息が出るほどでしたが、思いがけない救世主となったのが、当時小学生だった彼の長男です。

在宅透析の患者さんは定期検査のために月1、2回の受診が必要になります。そのたびに一緒についてきたのが、この息子さんでした。頭ごなしの物言いでぶっきらぼうな父親の話をなんでも「はい」と聞く、素直なかわいい子でした。家でも透析を手伝うようになり、小学校高学年になる頃には、想定外のキーパーソンになったのです。

闘病する父を最後まで支えた息子

息子さんのサポートのおかげで、それから5、6年は順調に続きましたが、ある日、患者さんが脳梗塞を起こしてしまいます。後遺症で手が動かなくなってしまったため、在宅透析をあきらめざるを得ませんでした。

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入院先に伺うと、あの気性の激しい奥様が甲斐甲斐しく付き添う姿がありました。

退院後はリハビリをしながらご自宅近くのクリニックで維持透析をされていたようですが、私の手を離れたことで、その後の消息を知ることはありませんでした。

ところが、それから十数年の月日が流れたある日、つい最近、息子さんから連絡を頂いたのです。脳梗塞の後リハビリを頑張っておられたものの、その後脳出血を起こし、そのまま病院で亡くなられたとのことでした。

お葬式に来てほしいとお声がけ頂きましたが、残念ながら業務があり参列できないと言うと、「先生が知る父について教えてほしいので、また連絡します」と電話が切れました。

幼かった息子さんが立派な社会人になり、私を覚えていてくれたこともうれしく思いましたが、波乱含みの家庭の中で、闘病する父を最後まで支えた彼の真摯さに心打たれました。そして、あの奥様はどうしていることでしょう。夫に対する愛情の裏返しからくる激しさだったのではないかと、今では切なく思い出されます。

ただし、振り返ってみると、幼い息子さんに透析のサポートを頼らざるを得なかった状況は、決して理想的なものではありませんでした。患者さんの希望を叶えることと、家族全体の福祉のバランスを取ることの難しさを改めて感じる事例でもありました。

鈴木 孝子 南青山内科クリニック院長、医師

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すずき たかこ / Takako Suzuki

1922年に長崎大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院をはじめ、複数の医療機関で腎臓内科医として経験を積む。2000年、東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了(医学博士)。高島平中央総合病院腎臓内科部長、森山リハビリテーション病院腎臓内科部長、駒込共立クリニック院長を経て、2011年に南青山内科クリニックを開業。慢性腎臓病・慢性腎不全を中心に、早期発見・早期治療の重要性を説き、患者一人ひとりに寄り添った診療を実践している。「患者さんと目を合わせ、気持ちを共有しながら良質な医療を提供する」ことを信念とし、日々の診療にあたっている。著書に『「生涯現役」をかなえる在宅透析』(幻冬舎)がある。

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