稲田:ありがとうございます。まさに僕も話したかったテーマでした。これは若者に限らずですが、いま長い文章が苦手な人が増えています。今回、本の執筆にあたって多くの大学生の話を聞きましたが、まず大前提としてお伝えしておきたいのは、大学の入学偏差値と長文を理解する能力はあまり比例しないということです。
偏差値の高い大学の学生だからといって本をたくさん読んでいるとは限らないし、長文を理解したり論理的な思考ができているとは限らない。
それを踏まえたうえで、ではなぜコミュニケーション能力は高いのに長文が苦手な若者が増えているのか。あるいは大きな文脈をストーリーとして理解できなくなっているのか。端的にいえば、今の世の中にあふれている文字情報が、短文のうえにとにかくわかりやすく整形されすぎているから、ではないでしょうか。
ウェブ記事を読むことと本を読むことの決定的な違い
その典型が、ウェブの記事やバズるSNSの投稿文です。これらは最初の数行に要約や結論が書いてあり、そのあとに細部が肉付けされている。非常に親切でシンプルです。
本のように、どこに着地するかわからない出口に向かって何時間もかけて読み進めながら、分割できない主張や思想や物語の全体像を捉え続ける――といった思考は必要としません。
こういうテキストばかりに触れていれば、多くの比喩や伏線が複雑に絡み合う、大きなうねりのあるストーリーを理解するトレーニングはできませんよね。
1冊の本はだいたい10万字前後あります。そして骨太な本であればあるほど、この10万字は文字通り「ひとかたまり」の思想なり主張なりなので、それ以上因数分解ができません。
何時間もかけて大きなかたまりのまま、構造ごと理解することを求められる。僕はそれが本というものの本来的な性質だと思いますが、こういうものを読み解くには、ネット上のテキストを高速で処理するのとはまったく違う能力を必要とします。




















