「丁寧に手打ち」「肉3倍ドーン!」 はなまるうどんが創業の地・香川県で大変化!インパクト十分も「丸亀製麺との差」を感じたワケ

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はなまるうどん
「はなまるうどん」を運営する「はなまる」は本社を東京・日本橋から香川県に再移転させ、讃岐うどんの魅力を発信する「おいでまい!さぬきプロジェクト」を始動した(筆者撮影)
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「はなまるうどん」は讃岐うどんの本場・香川県で創業、一時は四半世紀で全国47都道府県・500店以上の拡大戦略をとってきた。そんな「はなまる」が、本社を東京・日本橋から香川県に本社を再移転、讃岐うどんの魅力を発信する「おいでまい!さぬきプロジェクト」を始動した。

手始めに実施されているのは、「香川県内の5店・徹底改装」だ。それぞれのコンセプトに基づいた「手打ちと創造」「肉店」は、これまでにない、想像を超えたうどんを提供しているという。

さっそく、先頭を切ってリニューアルオープンした2店舗に足を運び、ズルズル啜ってみよう。確かにうどんは満足できるものだったが、業界2強の一角・丸亀製麺と比較して「そりゃ差がつくだろうなぁ……」と考えこんでしまう部分もあった。

うどん職人が、手作業で丁寧にうどんを打つ!「はなまる」新業態「手打ちと創造」とは?

はなまるうどん
「手打ちと創造」看板。背後に丸亀製麺がある(筆者撮影)

高松市の中心部から6kmほど離れた「手打ちと創造 はなまるうどん多肥店」は、1998年に開通した幹線道路「レインボーロード」(レインボー通り)沿いにある。なおこの道路は、ちょうど名称公募の時期にゲームソフト「マリオカート64」が大ヒットしたせいか、謎の多量得票でゲーム内のステージ名がそのまま採用されたという謂れを持つ。

片側2車線道路に沿って「餃子の王将」「ジョリーパスタ」「ガスト」「むさしの森珈琲」、そして「丸亀製麺」などのチェーン店がズラリと並ぶ、典型的な「ロードサイドの外食激戦区」だ。

その一角にあった「はなまるうどん多肥店」を改装した「手打ちと創造」は、組木をあしらった外観と、白地に手書きの「はなまる」「手打ちと創造」という立て看板が、「はなまる」時代より異彩を放つ。

手打ちと創造
ガラス張りのカウンターで、職人がうどんを打つ(筆者撮影)

そんな「手打ちと創造」に一歩足を踏み入れると、真っ先に目に入るのはガラス張りの「麺打ち場」だ。中では、職人さんがうどんを粉から練って玉にして、伸ばしてビニールシートをかけて足踏みして、それを切って茹でて。しっかりと手作業で、昔ながらのうどん作りを行っているようだ。

高松市出身の筆者も「親戚が集まるたびに、じいちゃんが張り切って打っちょったわ!(うどんを打っていた)」と感慨に浸るような、チェーン店とは思えない丁寧な手作業を眺めるのも楽しい。

手打ちと創造 かしわ天うどん
手打ちと創造 「骨付き鳥っぽい味のかしわ天うどん」(筆者撮影)
手打ちと創造
「手打ちと創造」麺リフト。「剛」より「柔」なイメージだ(筆者撮影)

なお、「手打ちと創造」は通常の「はなまる」のセルフ方式ではなく、カウンターのタッチパネルでうどんを注文、持ってきてもらう「フルサービス」店舗だ。さて、出てきたうどんは……手打ち麺としては、周囲に無数にある讃岐うどん店・製麺所併設店よりは柔らかめながら、工場から直送して店で茹でるだけだった従来の「はなまる」の麺にはない、コシとモチモチ感を感じる。

なお、従来の「はなまるうどん」に手打ちのノウハウはなかったため、讃岐うどんの業界団体「本場さぬきうどん協同組合」に頭を下げて、社員を送り込んで技術を取得させてもらったという。県外から讃岐うどんを食べにくる人々は何軒も名店を回るため、そのなかの1店として選択肢に挙げるなら、十分に合格レベルだろう。

手打麺や大島
「手打ちと創造」から1kmほど先の「手打麺や 大島」。この近隣は10軒ほどのうどん店がひしめく激戦区だ(筆者撮影)

さて、香川県産ヒノキを贅沢に使った店内で、名人直伝の職人技で作り上げたおいしい麺をいただける「手打ちと創造」は、“うどん県”こと香川県民の支持を得られるか?

周囲には向かいの丸亀製麺だけでなく、2km圏内にチェーン店なら「さか枝」「たも屋」、個人店なら「手打麺や 大島」「大島うどん」「上田」「國安うどん」「麺むすび」「三徳」などの名店がひしめく激戦区でもあり、ここに「かけ450円・天ぷらうどん系は1000~1300円」という高値で勝負をかける「手打ちと創造」は、厳しい戦いを強いられるかもしれない。

県外からの来客や、インバウンドの選択肢としては、十分にアリだろう。すでに駐車場はレンタカーやオフロードバイクが数多く見られ、「県外の『はなまる』と、全然違う!」といった口コミが広がれば、観光地としては十分に機能するだろう。

うどんも、おでんも肉・肉・肉!!恐るべき「はなまるうどん肉店」

はなまるうどん肉店 三種の煮込み肉まみれうどん
「はなまるうどん肉店」三種の煮込み肉まみれうどん(筆者撮影)
はなまるうどん肉店
「はなまるうどん肉店(高松兵庫町店)」外観(筆者撮影)
はなまるうどん肉店 三種の煮込み肉まみれうどん
丼からの肉の盛り上がりは、計測したところ「7cm」であった(筆者撮影)

8月7日にリニューアルオープンしたばかりの「はなまるうどん肉店(高松兵庫町店)」のテーマはズバリ「煩悩を解放せよ!」。デカ盛りの肉・脂・ニンニクを、うどんに載せて食らい尽くす!!! そんな「肉特化型・はなまるうどん」だ。

看板商品の「三種の煮込み肉まみれうどん」は、かけうどんと同じ感覚で受け取ると「ズシッ」と来て落としそうになるほどの重量感がある。うどんの上に、煮込まれた豚ロース肉塊・鶏・豚が、丼から7cmも上側にはみだすほど肉、肉、肉!!!……2、3分食べ進めても、まだ肉だらけの超・爆盛りカロリーを忘れて肉に食らいつきたい。

焼き塩豚カルビの半割レモンぶっかけ
「焼き塩豚カルビの半割レモンぶっかけ」。期間限定で全国発売している(筆者撮影)
焼き塩豚カルビの半割レモンぶっかけ
レモン半個分だと、絞っても絞ってもまだ果汁が出る(筆者撮影)

また「焼き塩豚カルビの半割レモンぶっかけ」は、注文してからフライパンで炒める豚カルビと主張強めの塩ダレが、ひと口目から「ガツン!!」と、尋常ではない味のパンチをもたらす。

塩と脂の旨みが詰まった肉デカ盛りのうどん、最後まで食べられるか?と思いきや、スライスではなく、ばっさり半切りのレモン(ビニール手袋付き)が添えられている。「肉店」だけあって、すべてをさっぱり食べ尽くすのに、この量のレモン果汁が必要なことなど、お見通しのようだ。

煩悩トッピングの数々。右上は吉野家の「にんにくマシマシだれ」と同様のようだ(筆者撮影)

ここに、数々のうどんの“味変”を担う、チーズ・キムチ・辛魚スパイス・マヨネーズなどの「煩悩トッピング」(全品100円)が加わる。よく見たら、容器が吉野家でよく使われているものと共通で、なかには吉野家の「牛玉スタミナまぜそば」で使用している「にんにくマシマシだれ」の姿も! 「はなまるうどん」は、「吉野家ホールディングス」傘下であり、しっかり食材・容器を共有しているようだ。

はなまるうどん肉店
「肉店」メニュー。「笑いの文化人講座」「観音寺けいりん」などのデザインで有名な岡谷敏明氏デザインの「うどん脳」も見える(筆者撮影)

ほか「肉店」では、ニンニクたっぷりの豚肉・野菜を炒めて乗せた「スタミナ肉野菜炒めうどん」、牛肉てんこ盛りのカレーうどんに巨大カツが突き刺さる「あふれ盛り肉カレーうどん」などがいただける。一部商品は全国の「はなまるうどん」で限定発売するものの、ほとんどのメニューは「肉店」でしかいただけない。

どのメニューも「丼からの肉のはみ出しぶり」は半端なく、香川県産の小麦「さぬきの夢」を配合したモチモチ・ツルツルの新麺(県内のみで提供)にしっかり肉汁が染みわたり、相性も抜群。斬新な肉系うどんの数々から、「丸亀にも資さんにもないものを作るぞ!」「業界からはみ出すぞ!」と言わんばかりの「はなまる」の気概を感じたのは、気のせいだろうか。

はなまるうどん肉店
アーケードに掲げられた「肉店」巨大ペナント。この日は「高松まつり」開催中(筆者撮影)

なお、この「肉店」は四国有数の商店街「丸亀町」とアーケードでつながっており、近隣の高齢者向け住宅から、日々の食事のために訪れる方々も多い。よく見ると「かけ」「釜揚げ」などのレギュラーメニューの注文が多く肉系の注文をされている方は、あまり多くなかった。

地元の方向けの食のインフラ役を果たしてきた「はなまるうどん」高松兵庫町店が、肉目当ての観光客と程よく住み分け、これからも長らく営業できるか。昔ながらの地元仕様店であった「兵庫町のはなまる」の雰囲気も、大切にしてほしいものだ。

うどんはおいしいのに……プロモーションで感じる「丸亀製麺との『言語化』の差」

はなまるうどん肉店
はなまるうどん「肉店」での「麺リフト」。今どきは言語化と一瞬のインパクトによるプロモーションが必要となる(筆者撮影)

ただし、「肉店」に関しては、食べながら少々疑問を持った。セルフうどん・2強として戦っていくにあたって、「これが『はなまるうどん』の良さの訴求につながるのだろうか?」ライバル・丸亀製麺のプロモーションと、少しばかり比べてみよう。※先に申し上げるが、味に関しては文句なし、満足できるものであった。

まず、疑問に思うのがSNS・広告戦略だ。「肉まみれ」「肉盛り」のインパクトは十二分に訴求できているが、せっかくの肉が「はなまる」の麺とベストパートナーであるかは、なぜかホームページでもSNSでも触れられていない。

肉も「盛り」はいいものの、例えば「讃岐三畜(香川県産の『オリーブ牛』『讃岐夢豚』『讃岐コーチン』)である」「調理に手間をかけている」などのプレミア感もなく、「当社従来商品の3倍盛り」といった言及のみ。これは、プロジェクト開始時にうたわれていた「香川県でしか食べられない讃岐うどん」なのだろうか?

丸亀製麺 海鮮旨塩うどん
丸亀製麺の「海鮮旨塩うどん」の場合(筆者撮影)

昔から「はなまるうどん」は、チェーンストアとしてはやや言語化能力が低い、というより「口下手」感がある。比較して、丸亀製麺が商品の発売とともに行う、ホームページなどでの細かい言語化の実例を見てみよう。

「揚げた干しえびの香りと紫玉ねぎの食感が味わいを広げる香味玉やシナチクの歯ごたえが、旨塩だしに新たなおいしさを加えます。海鮮やうどんと絡めると、口いっぱいに広がる香ばしさと多彩な味わいに驚きます」(季節限定・海鮮旨塩うどんの場合)

「具材のおいしさ」「麺との相性」にしっかり言及していることに、注目していただきたい。100文字程度のセンテンスは、そのままSNSでの好意的な拡散につながる。

これが「はなまるうどん」だと、「塩豚カルビと半割レモンを組み合わせた、夏らしいぶっかけうどん」「ニンニクが効いたパンチのある味わいがクセになる、後を引く味わいです」「煩悩を解放せよ」こうなる。これだと肉の相棒は「はなまるうどん」でなくても、うどんでなくてもいいのでは?

手打ちと創造
「手打ちと創造」麺打ち場(筆者撮影)

「手打ちと創造」も、「ブランド初となる“麺打ち場”を導入」だけでは、製造工程をほぼ丸々見えるようにしている丸亀製麺と比べ、知らないとインパクトを感じない方も多いだろう。ここは「混捏(こんねつ)・足踏みといった手作業でコシや食感がどう変わるか」(麺打ち場をライブ化するだけでなく、作業の意味の解説)「この食文化が讃岐の田舎でどう育ったか」という解説が、せめてQRコード経由の動画・解説が見られるくらいの工夫があってもいいのではないか。

讃岐うどんの魅力・歴史をその場で深掘りして読めるコンテンツなら、「はなまるうどん」と協力関係にある「さぬきうどん未来遺産プロジェクト」内に十分にあるはずだ。

「はなまるうどん」ブランドのコンセプトを担い、県外からの来客を呼び込む店舗なら、「来店を『体験価値』に変える」丸亀製麺の発想を、ちょっとでも真似できないのか?……おいしくうどんをいただきながら、外食企業としての不器用さ・勿体なさを感じたのは、そういった部分だ。

うどん食堂・うどん居酒屋も?はなまるの「讃岐で原点回帰」

はなまるうどん
はなまるうどん創業の地・木太店。改装が予定されている(筆者撮影)
はなまるうどん
はなまるうどん・香川県内の改装予定一覧(はなまるうどん 公式SNSより)

紹介した2店に次ぐ今後の香川県内「はなまるうどん」改装予定と、予想されるメニューを、高松市出身の筆者なりに想像してみた。(願望含む)

【日常(食堂)】いつもの暮らしに讃岐うどんと新しい彩りを(木太店)
【時間(酒場)】昼も夜も讃岐うどんを楽しみつくす(田町店)
【探求(LABO)】常識にとらわれない讃岐うどんの可能性を追求(高松三条店)

2000年5月に開業した「はなまるうどん」創業店・木太店には、創業当時は絶品レシピの開発に優れた武市さん(木太店名誉店長・現在は退職)という方が16年にわたって勤務されており、うどんのみならずオムライス・チャーハン・カレーなどが、とても家庭的で美味だった記憶がある。

食堂としての復活ということは、いまも「はなまる」の看板商品であるカレーだけでなく、家庭的で優しい、武市さんのレシピによる数々のメニューが復活することを期待したい。また、無理のない範囲で武市さんの再登場も期待したいところだ。

また香川県内のお酒が好きな方は、柔らかい塩っ気があるうどんだしで、日本酒・ハイボールを割ったり、チビチビ啜ってアテにすることもある。製麺所併設のうどん店は朝・昼を過ぎると閉めてしまうため、夜営業で酒が飲める田町店の改装オープンにも期待したい。

冬なら子持ちイイダコ煮つけ、春ならサッと焼いたサワラや押し寿司など、香川県の地のもの+うどんで、「綾菊」あたりの地酒をクピクピ飲める「うどん居酒屋」なら大歓迎!……ただし、高松市内には「えん家」「鶴丸」「しんぺいうどん」など同様の「夜うどん店」も多く、あくまでハシゴ呑みの選択肢としてオープンを待ちたい。

なお「はなまるうどん」全体としては、2025年秋以降に都心で小型店向け・新ブランドのうどん店をオープンするという。くわえて、改装した5店舗のうちどれかの人気が出れば、新ブランドとして全国展開してみてもいいだろう。

はなまるうどん木太店
はなまるうどん木太店。2000年に開店した「創業一号店」(筆者撮影)

「はなまるうどん」は、全国ではセルフうどん2強の一角・丸亀製麺に押され気味でもあり、県内では「こがね製麺所」「こだわり麺や」など、香川県発祥の他のセルフうどんチェーンに抜き去られつつある。

「うどん100円(創業当時)、ファストフードのような店内」といったコスパ・親しみやすさで全国制覇を果たした「はなまるうどん」が、「讃岐うどんの伝統的な食文化を継承」「讃岐うどんの新しいカタチを追求していく」という大上段に構えたテーマを、今後どう背負っていくというのか? 今後のゆくえに注目したい。

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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