価値向上を実現する企業群「SX銘柄」とは(第3回) 先進的なサステナビリティ戦略がもたらす価値

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経済産業省と東京証券取引所が、持続可能な社会の実現に向け、先進的な取り組みを推進する企業を選定する「SX銘柄2025」。選定された各社が進めるサステナビリティ戦略と、社会へ創出する価値とは。キーパーソンへのインタビューを通じて、SXへの取り組みによって各社が追求する「未来へのビジョン」に迫る。

ダイキン工業
磨き上げた「環境技術」で快適と気候変動対策を両立

ダイキン・澤井氏
ダイキン工業
常務執行役員
澤井 克行

ダイキンは、環境負荷を低減しながら、人と空間を健康で快適にする新しい価値を提供することを、長期の時間軸での「めざす価値創造」として掲げています。特に、気候変動問題を最重要課題と位置づけ、事業の成長と環境・社会課題の両立に取り組んでいます。

弊社は空調と冷媒の両方を手がけており、インバータやヒートポンプ、冷媒制御技術などの「環境技術」を長年追求し、それを活かした差別化商品をグローバルで展開してきました。

世界170カ国以上に販売網を展開し、地産地消を基本とした市場での最適化生産を進めるとともに、基幹部品を内製化することで垂直統合生産を実現しています。加えて、生産・販売・研究・調達の「四位一体での商品開発」を行い、独自のビジネスモデルを構築しています。

世界各国へ情報提供や政策提言を行うアドボカシー活動も強化しています。たとえばインバータ搭載機は、ノンインバータ機と比べて消費電力を50%以上削減できますが、普及率の低い国が多数あります。国際機関等と連携してさまざまな国の省エネ基準を策定するなど、快適さと環境保全を両立できるインバータ機の普及を推進しています。

低温暖化冷媒の普及のため、R32関連特許をグローバルに無償開放しているのも、弊社独自の取り組みです。今後も環境と空気の新たな価値を提供しつつ、温室効果ガスの削減に貢献することで、企業価値を向上させていきたいと考えています。

TDK
イノベーションを加速させる人的資本への投資強化へ

TDK・齋藤氏
TDK
代表取締役
社長執行役員CEO
齋藤 昇

TDKは、社会全体のトレンドであるGXとDXを強く意識した長期ビジョンに基づき、事業活動を通じて持続可能な未来の実現に貢献することを目指しています。事業ポートフォリオの変革や、将来の財務的価値に繋がる「未財務資本」※の強化といった具体的な施策を通じて、サステナビリティを高める価値創造プロセスを明確に示しており、これが選定に繋がったと認識しています。

特に注力するのが人的資本への投資です。例えば、グローバルマネジメント育成プログラムによる多様な人財の連携を強化し、イノベーションを推進する変革力を高めています。

こうした戦略を加速するため、2025年4月には人事部門を全社経営戦略の重要部門と位置づけ、CHROを新設しました。また、SX推進のため、気候変動や人権など多様なサステナビリティ分野への取り組みを重要課題とし、同年4月に複数の組織横断メンバーから構成されるサステナビリティ委員会を設置しています。

企業価値向上のためにはフリーキャッシュフローの最大化、資本コストの低減、そして期待成長率の向上が不可欠です。中期経営計画では、この実現に向けた3つの柱として「キャッシュフロー経営」「事業ポートフォリオマネジメント」「未財務資本」の強化を掲げています。これらの戦略を通じて、今後も社会と企業の持続的な成長を両立させながら、企業価値の最大化にコミットしてまいります。

※非財務資本のTDK独自の呼称

ニチレイ
食生活と健康を支える長期的な取り組みを加速

ニチレイ・大櫛氏
ニチレイ
代表取締役社長
大櫛 顕也

今回の選定は、グループマテリアリティと連動させた独自のマネジメントサイクルを仕組み化し、環境変化に応じた柔軟な対応ができている点を評価いただいたと捉えています。

当社は今年5月に新たな長期経営目標「N-FIT2035」※を策定しました。長期的な競争優位性を確立し、豊かな食生活と健康を支え続ける企業として、新たな長期目標の達成に向け各取り組みを加速しています。

食品事業では、健康やパーソナルユースなど多様なライフスタイルに合わせた商品拡充に加え、人権デューデリジェンスなどを通じた持続可能なサプライチェーン構築に注力。低温物流事業では、冷凍食品物流基盤を活用した共同配送や予約システム導入でドライバーの待機時間を削減し、トラックドライバー2024年問題をはじめとする労働力不足への対応を進めています。これらの活動を通じ、社会的価値と経済的価値を追求するサステナビリティ経営を推進しています。

昨年発行の統合レポートでは、財務・非財務コネクティビティを初開示。非財務の取り組みが企業価値向上に繋がる財務因子へ寄与することが確認できました。これにより、非財務施策を推進する部門においても、企業価値向上に対する意識がより一層醸成されたと感じています。各取り組みを直接的な効果だけに留めず、企業価値向上から逆算して考える視点を持ち、新たな価値を追求し続ける企業として歩みを続けてまいります。

※Nichirei Future Innovative Tactics 2035

パーソルホールディングス
“はたらくWell-being”が実感できる社会を創造する

パーソル・和田氏
パーソルホールディングス
代表取締役社長 CEO
和田 孝雄

総合人材サービスを展開する当社グループは、人の人生やその転換点に関わる重要な使命を担っています。その使命を果たし、事業を通じて価値を創造し続けていくために、2030年に向けた「価値創造ストーリー」を設計しました。これは、一人ひとりが自ら仕事を選択し、キャリアを築き、より良い人生につながる社会をつくるという思いを込めたグループビジョン「はたらいて、笑おう。」への道筋でもあります。

当社グループは、「”はたらくWell-being”創造カンパニー」をありたい姿とし、「人の可能性を広げることで、2030年に100万人のより良い”はたらく機会”を創出」を価値創造ゴールとしています。また、その実現に向けて8つのマテリアリティを特定しています。マテリアリティは「事業を通じた社会課題の解決」と「持続的成長を実現するための基盤」に分かれており、いずれも経営に直結する重要なテーマとして継続的にモニタリングしながらPDCAを回しています。

また、価値創造ゴールに掲げた「人の可能性を広げる」ために取り組んでいるのが、テクノロジー活用です。「人にしかできない」領域を明確にしたうえで、AIやデジタルによる業務効率化やプロダクト開発を推進しています。「人とテクノロジー」を適切に組み合わせることで、個人の可能性を広げるとともに企業の生産性向上に貢献し、より良い社会の実現と当社グループの中長期的な企業価値向上につなげていきます。

連載第1回はこちらから

連載第2回はこちらから

連載第4回はこちらから

SX銘柄2025についての詳細はこちらから