価値向上を実現する企業群「SX銘柄」とは(第2回) 先進的なサステナビリティ戦略がもたらす価値

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経済産業省と東京証券取引所が、持続可能な社会の実現に向け、先進的な取り組みを推進する企業を選定する「SX銘柄2025」。選定された各社が進めるサステナビリティ戦略と、社会へ創出する価値とは。キーパーソンへのインタビューを通じて、SXへの取り組みによって各社が追求する「未来へのビジョン」に迫る。

味の素
アミノサイエンス®を軸に社会価値と経済価値を共創

当社グループは、2030年までに10億人の健康寿命を延伸し、環境負荷を50%削減するという目標を掲げています。そして、2023年に志(パーパス)を「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」へ進化させました。

味の素・佐々木氏
味の素
取締役 執行役専務
コーポレート本部長
佐々木 達哉

この志を実現する取り組みが、創業以来の「事業を通じて社会価値と経済価値を共創する」ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)です。アミノサイエンス®という独自の競争優位性をコアにビジネスモデルを構築し、サステナビリティへの取り組みを経営戦略そのものにする体制を整えています。

「味の素®」の生産過程で生まれる各種アミノ酸を豊富に含む副生物で農作物を元気にする取り組みも、その1つです。サトウキビなどの原料作物から「味の素®」を生産し、その過程で生まれた発酵液を再び農作物の肥料として循環活用しています。

地球にやさしい製法で生産効率を上げることで、農業や経済成長への貢献を目指し、日本政府とブラジル政府が推進する劣化農地回復プロジェクトにも参画しています。

こうしたアミノサイエンス®をはじめとする技術資産と幅広い顧客をつなぎ、イノベーションを生み出す「人財資産」の強化にも力を注いでいます。同時に資本コストを意識した事業管理を行うことで、今後も社会課題の解決と経済価値の創出を両立させ、企業価値の向上につなげていきたいと考えています。

KDDI
IoTビジネスでの社会的インパクトを可視化

KDDIは中期経営戦略の軸にサステナビリティ経営を据え、通信技術を中心としたパートナーシップや安定した財務基盤といった強みを生かし、社会への提供価値を企業価値向上につなげる施策を推進しています。とくに、イノベーションと事業機会の創出や人財戦略に力を入れており、これらの取り組みが評価されたと考えています。

KDDI・最勝寺氏
KDDI
取締役執行役員専務 CFO
コーポレート統括本部長
最勝寺 奈苗

また非財務活動と企業価値の関係性を分析し、可視化する活動を進めています。2023年度に企業活動の社会的インパクトを定量的に示す「インパクト加重会計」を実施し、当社のIoTビジネスを通じて創出された社会的価値を金額換算し、企業価値の理解促進を図りました。

IoTの提供が社会に与える影響は、合計で5000億円以上の価値と算出され、自社の業務が社会に与える影響の大きさや役割の重要性を、社内でも再認識いたしました。

中期経営戦略においては「サテライトグロース戦略」と「経営基盤強化」を両輪に、経済・社会・環境価値を創出するサステナビリティ経営を推進。その成果を社会に還元する好循環を生み出すことを目指します。

この7月に移転した高輪の新本社も、パートナー様と未来をつくる実験場として、社内外の共創を促進するスペースを設置するなど新たな試みを進めています。これからも部門や会社を超えたアイデアやイノベーションの創出へ、積極的に取り組んでいきたいと思います。

ソフトバンク
分散型AIデータセンターで次世代社会インフラを構築

「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下で、全社を挙げてサステナビリティ経営を推進しています。大きな特長としては、ESG関連のKPIを役員報酬だけでなく、社員の目標設定とも連動させている点です。またLINEヤフーやZOZOといった300社以上のグループ企業全体が、同じ視点で取り組める仕組みを構築しています。

ソフトバンク・池田氏
ソフトバンク
ESG推進室 室長
池田 昌人

社員サーベイでは96%が「マテリアリティ(重要課題)を認知」しており、80%が「自らの仕事がESGやSDGsに貢献している」と回答したのは、そうした取り組みの効果と考えています。

2023年に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する」という長期ビジョンを発表しました。AIが生み出す膨大なデータ処理やエネルギー消費を平準化するため、全国に分散してデータセンターを整備していきます。

再生可能エネルギーを利用する地産地消型を目指すほか、1兆パラメータの大規模計算基盤や量子コンピュータも実装する予定です。またAI活用に関する倫理やセキュリティの問題にも対応できるようAI倫理委員会も開催しています。

こうした取り組みを持続的に支えるには、人材戦略が重要です。AIエージェントなどテクノロジーの進化に伴って、事業のあり方や必要な業務は随時変わっていきます。つねに人材ポートフォリオの最適化を図りつつ、社員の働く環境を整え、企業価値の向上を図っていきます。

第一三共
パーパスを実現する価値創造モデルの循環

「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」というパーパスの下、世界共通の社会課題であるがんに対し、当社は独自技術である抗体薬物複合体(ADC)を用いた革新的な治療を実現してきました。サイエンス&テクノロジーを起点に社会課題の解決に貢献することが、製品の社会価値向上やパイプラインの充実など好循環を生み出しており、こうした当社の価値創造モデルが評価されたことは非常にうれしく思います。

第一三共・奥澤氏
第一三共
代表取締役社長兼CEO
奥澤 宏幸

価値創造モデルの実現においては、主に3つのことに注力しました。1つ目は患者さんへの貢献。患者さんへの思いやりやイノベーションへの情熱を合言葉に、Patient Centricityの価値観を世界中の従業員と共有しています。また、患者さんの声を反映させた医薬品開発PFDDの推進に加え、患者さん・医療関係者と双方向の対話を行うCOMPASS活動に取り組んでいます。

2つ目は人的資本の強化。経営戦略と人事戦略を連動させ、研究開発・設備への大規模な投資とともに、人材に対して成長機会の提供を進めています。

3つ目はマルチステークホルダーへの貢献。成長の果実をバランスよく配分することで、企業価値の向上と社会の持続的発展に寄与しています。

今後も当社ならではのサステナビリティ活動を行い、何のために働き、存在しているのかのパーパスを、従業員一人ひとりが実感できるよう、持続的な価値創造に挑戦し続けます。

連載第1回はこちらから

SX銘柄2025についての詳細はこちらから