三菱電機、日野自動車、豊田自動織機…頻発する企業不祥事の根本原因は「組織文化」にある
②損害保険ジャパン
組織的で悪質な保険金の不正請求の報告を受けながら、厳格な指導や調査を行った場合の相手方の反発や営業成績・収益への影響を懸念し、組織的対応を講じずに被害の拡大を招きました。
立入検査を行った国からの業務改善命令では、「顧客利益より、自社の営業成績・利益に価値を置く」「社長等の上司の決定には異議を唱えない上意下達」「不芳情報が、経営陣などに適時適切に報告されない」企業文化が真因とされました。
③近畿日本ツーリスト
地方自治体から受託したワクチン接種に係るコールセンター業務で、実際の稼働数量とは異なる過大費用を請求しました。この不正は各支店が独自に行ったものですが、広範な地域の複数支店で同時並行的に発生した上、長期継続し、発覚まで是正されませんでした。
このため、原因は一部社員の低い意識ではなく、「利益追求への強い指向」「行為の妥当性・適法性への意識希薄化」「脆弱な管理態勢」「社内各階層間の意思疎通の欠如、現場の問題を躊躇なく経営陣に進言する風土の欠如」などの企業カルチャーが根本原因、と調査委員会は結論づけました。
組織文化の共通課題
各事例は読むだけで気が滅入りますが、それぞれに類似する構図にも気づきます。こうした歪んだ意識が浸透していても、ただちに事故や不祥事に直結しないので、生活習慣病と同様に、放置されがちです。その結果、潜在的なリスクをはらみながら日常が繰り返され、やがて、あるきっかけで一気に問題が噴出し、大事故や不祥事に発展してしまいます。
そこで、こうした調査結果から教訓を抽出し、同様の事態が自組織でも起きないようにするため、深く考えてみます。
前記の6事例は分野の異なるものですが、いずれも基本ルールや原則から意図的に逸脱した不祥事という点で一致します。そこに共通して見られる特徴には、
❷ 内向きの視線(自職場だけよければよい、他部門や社外、お客さまへの関心が薄い)
❸ 経営と現場との乖離(課題が共有されない)
❹ ルールやプロセスにしたがって正しいことが行われない
❺ 管理職がやるべきことを行っていない
などが挙げられます。
つまり、いくつもの要因が絡みますが、本来やるべき正しいことからの逸脱が日常化し、それが当たり前になり、問題ある状況が是正されないことが核心です。
言い換えれば、各職場が直面する課題を自主的に改善する力が働かず、経営からの支援も得られず、不正を招く「動機」や「機会」となる問題が放置され、さらに歪んだ「正当化理由」を許す無意識の考え方が、組織文化(=一人ひとりの共通的な意識・行動の集まり)の最深層に浸透し、「不正のトライアングル」を成立させるのです。
一方、本来やるべき正しい行動は、シンプルです。たとえば、「自働化」が進んだトヨタ自動車の工場では、異常があったとき、チームの誰もが「アンドン」の紐を引いてライン全体を止めることができ、全員が品質への責任を持ちます。
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