三菱電機、日野自動車、豊田自動織機…頻発する企業不祥事の根本原因は「組織文化」にある

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ところが、各6事例とも、問題に気づいていた人が多数いたのに、管理職も現場も声を上げませんでした。

なぜ、誰もアンドンの紐を引かなかったのでしょうか?

制度化、合理化、社会化

組織的な不正が長期継続するメカニズムを、アリゾナ州立大学のアッシュフォース教授は、①不正が日常的に妥当性を意識することなく行われるようになる「制度化」、② 不正のトライアングルの一要素でもある、組織内でしか通用しない説明によって不正を正当化する「合理化」、③新たに組織に加わるメンバーに不正が容認されるものと教育する「社会化」の3プロセスが相互に影響し合い、不正の常態化を助長すると解説します。

特に、①の「制度化」とは、

❶ 最初の不正が行われ、
❷ それが追認され、発覚せず、
❸ 前例にならうことへの抵抗感が薄くなり、不正が繰り返され、
❹ 不正を前提とした仕事の流れや評価などに変化した結果、外部から隔離された「社会的な繭」の中で不正を容認する組織文化が形成される。

という一連のプロセスです。

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つまり、不正がルーチン(習慣)化し、間違った行動が意識を歪め、その意識が行動習慣化を助長し、組織の仕組みとなり、一人ひとりのDNAとも言える「組織文化」に組み込まれます。

組織事故の研究で著名なジェームズ・リーズン教授は、安全文化づくりには、「報告する文化」「正義の文化」「柔軟な文化」「学習する文化」の4要素が必要だと言いました。

安全と同様に、品質管理や日常運営面でこの要素を欠いた結果、不祥事が繰り返される、と見ることもできます。

ひとたび、正しい文化を築いてしまえば、社員の自律的な行動によって事故や不正は起きにくくなります。

逆に、そうでない場合、各6事例のように、いくら立派な行動指針やマニュアルを整備していても、起こるべくして起きる事故や不正の連鎖に苦しみ続けます。

これは決して、他人事ではない筈です。

小池 明男 カルチャー変革エバンジェリスト

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こいけ あきお / Akio Koike

1987年 東京大学法学部卒業後、東京電力(株)入社、主に経営企画や営業を担当。エネルギーの効率利用と脱化石燃料化による低炭素社会づくりを提唱し、地球温暖化対策の推進に努める。ハーバード大学・国際問題研究所研究員(2008年)。2011年の震災・事故以降、経営を補佐し、社員意識高揚や組織改革に取り組む。震災史料のアーカイブ化を行い、2018 年より事故教訓を浸透・継承する全社員研修を始め、基盤となる安全啓発施設「3.11 事実と教訓」を整備し、組織文化変革を推進。2021年、安全啓発・創造センター所長。事故の根本原因を組織文化に求め、ゆるぎない安全文化構築のため、一人ひとりの意識と行動を変える手づくりの組織改革の取り組みは、NHK ニュースウオッチ9 「東京電力の組織風土の問題、意識を変えることはできるのか」(2021年3月放送)、KFB福島放送「シェア!」(2022年3月放送)をはじめ、複数の報道等で紹介される。2022年東京電力ホールディングス退職後、独立。「カルチャー変革エバンジェリスト」として、さまざまな企業の組織変革に携わっている。

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