見えてきた韓国・李在明政権の「実用外交」の中身、対日政策では「反尹錫悦」より「非文在寅」、歴史問題は「屈辱外交」から「小さな違い」へ

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この発言の延長線上には、李氏と文在寅・元大統領の微妙な関係も取りざたされる。

左派理念が強い文氏は、大統領就任直後から、前任の朴槿恵政権の数少ない実績だった、日韓慰安婦合意を骨抜きにする作業に着手した。その過程で徴用工問題まで勃発し、日本との外交関係は深刻な状態になった。

文在寅政権との違い強調

よりによって日本側も、内向きの歴史認識に執着した安倍政権であり、互いに対抗措置に次ぐ対抗措置を繰りだして不毛な対立を続けた。

李氏が今回の大統領選当選で、いわば右派(保守)から権力を奪還したことは間違いない。ただ、文政権の対日政策に関して李氏の評価は極めて冷ややかだという。

大統領選前に李氏の外交政策づくりにも加わった1人は「口に出して話すのを聞いたわけではないが、恐らく李氏は、文政権の対日外交が自身の実用外交とかけ離れており、同一視されるのを最も嫌がっているのではないか」と話す。

この推測が正しければ、少なくとも対日外交において李政権は、「非文在寅」的な接近方法をこれからも試みる可能性がある。

ただ、李氏が実用外交を掲げているといっても、両国間には歴史認識や2国間の境界をめぐる懸案が確実に存在する。初の対面での日韓首脳会談を終えた後、韓国政府関係者は韓国メディアに「過去の問題にフタをしようというのでは決してない。過去の問題はちゃんと取り上げる。ただ、それが現在や未来の問題を阻害しないよう管理せねばならない」と語ったという。

日本政府とすれば、李政権の「非文在寅」的なものの考え方をうまく活用しつつ、国際会議などで可能な限り、トップ同士が直接対話する機会を増やし、早期にシャトル外交を再開させるべきだろう。

李政権が文政権以前の、とりわけ金大中政権を意識した対日外交姿勢をとるのであれば、日本側もまた、安倍政権以前の約束や基準を守り続けることが求められる。
 

箱田 哲也 朝日新聞記者

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はこだ てつや / Tetsuya Hakoda

1988年4月、朝日新聞社入社。初任地の鹿児島支局や旧産炭地の筑豊支局(福岡県)などを経て、1997年から沖縄・那覇支局で在日米軍問題を取材。朝鮮半島関係では、1994年にソウルの延世大学語学堂で韓国語研修。1999年からと2008年からの2度にわたり、ソウルで特派員生活を送った。

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