「愛の不時着」「シュリ」にも登場!謎多き“韓国のCIA”『国家情報院』の実態とは?工作員は“ホテルで体液を採取”することも

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最もランクの高い「A級」の工作員は、韓国の政府機関などと敵対関係にある団体に潜入し、内部の人間になりすますか、関係者を取り込むかの方法で情報を収集することが求められる。

例えば、北朝鮮を支持する在日コリアンの団体である朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)に入り込み、幹部などを協力者にして直接情報を取るといったイメージだ。

実話がモデル『工作 黒金星と呼ばれた男』     

A級工作員の実態を知るのに最適なのが、2018年の韓国映画『工作 黒金星と呼ばれた男』だ。

徹底したリサーチと考証を基に1990年代の北朝鮮の姿を再現し、韓国から北朝鮮に潜入した工作員がスリリングな活動を展開する内容で、対北工作の様子が生々しく描かれている。

映画では、軍での輝かしい経歴を捨てて国情院の前身である安企部で室長直属の工作員となった、ファン・ジョンミン演じるパク・ソギョンが、北朝鮮の核開発に関する情報を探るため、ビジネスパーソンとして中国に派遣される。

「黒金星」というコードネームを付けられたパクは、イ・ソンミン演じる朝鮮労働党の幹部と信頼関係を築いて、金正日総書記と会うことにも成功する。

これは実話を基にした映画で、モデルとなった工作員も存在するが、その活動内容はA級工作員そのものだ。

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映画の中でパク・ソギョンが長い時間をかけ、リスクを冒しながらも少しずつ核心の情報を得ていく様を見ていると、世界のあちこちで新たな「黒金星」が、身分を隠しながら情報収集活動にあたっているのだろうと想像してしまう。

A〜D級までのレベルがある協力者や工作員だが、実際にはC級以下が大半を占めるとされる。

1990年代半ばに安企部が作成した内部資料によると、協力者や工作員全体のうちC級以下の協力者が約80%で、その多くはジャーナリストや北朝鮮と連絡を取っている離散家族、北朝鮮へ投資や宣教活動を行うビジネスパーソンや宗教関係者だった。

大半はD級に区分され、金銭目当てに近づいてきて、何の情報も持ってこないまま連絡を絶つケースも少なくなかった。

「黒金星」のようなA級工作員は、全体の中でほんの一握りだと言える。

佐藤 大介 共同通信 編集委員兼論説委員

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さとう だいすけ / Daisuke Sato

1972年、北海道生まれ。明治学院大学法学部卒業後、毎日新聞社を経て2002年に共同通信社に入社。韓国・延世大学に1年間の社命留学後、09年3月から11年末までソウル特派員。帰国後、特別報道室や経済部(経済産業省担当)などを経て、16年9月から20年5月までニューデリー特派員。21年5月より編集委員兼論説委員。著書に『韓国・国家情報院』『ルポ 死刑』(幻冬舎新書)、『13億人のトイレ~下から見た経済大国インド』(角川新書)などがある。
 

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