アメリカでの成功を後押ししたのは、1964年の「サンババス」なる8人乗りのマイクロバスの導入だ。これが「ワーゲンバス」の呼び名の由来である。
当時としては比較的長めの2400mmのホイールベースを持ち、ビートルと同じ空冷水平対向4気筒エンジンを、後輪のうしろに搭載。ドライバーをぎりぎり前に座らせることで、3列シートを確保するパッケージだった。

パッケージから導き出されたエクステリアデザインだったのだろう。ビートルとある意味似たデザインアプローチだったかもしれない。
担当はフォルクスワーゲンの商用車部門。フランスのルノー「カングー」もそうだが、あちらでは商用車は物流用のパレットが積めることを前提に設計される。
いってみれば、内部からサイズが規定されて作られたというわけだ。今回のID. Buzzは、その乗用車版。
それでも、前にトランクをもたず、すっきりしたフロントマスクとしたType 2のほうが、いってみればクリーンで、かつ目玉のようなヘッドランプが強調されることで、生物を思わせる、かわいらしさも感じさせた。
デザインで消費者にアピールする手法を、ID. Buzzでもフォルクスワーゲンは強力に推した。

本社のヘッドオブデザインのアンドレアス・ミント氏(前職はベントレー)は「人に愛されるデザインがなにより大事」と私に語ったことがある。
ID. Buzzも商用車由来
東京・六本木の特設会場で紹介されたID. Buzz。日本に導入されるラインナップは2つだ。
「ID. Buzz Pro」(全長4715mm、ホイールベース2990mm)と、「ID. Buzz Pro Long Wheelbase」(4965mm、3240mm)で、どちらも出力210kW、トルク560Nmのモーターで後輪を駆動する。
バッテリー容量はロングホイールベース版のほうが大きく、一充電走行距離は標準モデルの524kmに対して、554kmと少し長い。

私は最初に発表された標準ホイールベースモデルをコペンハーゲンで、追加されたロングホイールベースモデルをドイツで試乗したことがある。
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