まず会見で述べられた限りでは、日本テレビの上層部は事象を2025年5月27日に知ったとされる。そしてすぐさま外部の弁護士に相談し、調査を開始。国分さんには6月18日までに事実の確認のうえで降板を申し入れ、6月20日に発表となった。
その場では「コンプライアンス違反であり」とはいえ「刑事告訴の事案ではなく」、さらに「日本テレビの判断として詳細は語らない」とし「反社勢力とのつながり事案ではない」とした。国分さん自身の芸能活動休止発表とともに、所属事務所や自身の経営企業からも事実を認めるコメントが相次いだ。
なお、刑事告訴の対象ではないとはいえ、被害者が刑事告訴を望んでいないケースもあるため、内容はさまざまな可能性をはらむ。また局としてはさまざまなスポンサーに説明するだろうし、そもそも他局にも情報は伝播していくから、のちのちそのコンプライアンス“違反”の内容は明らかになっていくだろう。
たとえばフジテレビおよびフジ・メディア・ホールディングスの事件の際に、記者会見に臨んだ記者らは、局から「プライバシーの観点から説明を控える」といわれたら激怒していただろう。個人名は出さずとも、局員がやったことは説明する必要があるだろう、と。
しかし現時点での情報でいえば、日本テレビ側の局員が加害に加担した、というわけではない。むしろ日本テレビは独自で調査をし、他の報道機関から探られていたわけでもなく、起用タレントのコンプライアンス違反を発表した。
日本テレビの親会社である日本テレビホールディングスは6月27日に株主総会を開催する。隠して乗り切りたい、と思う可能性もあるが、善管注意義務からも発表を見逃せない事態だったのだろう。
なお、これは皮肉でも称賛でもなく、たんなる事実なのだが、日本テレビホールディングス株式会社の取締役選任候補はスキルマトリクスで「ガバナンス・リスク管理」に一人を除いて全員にチェックがついている(スキルマトリクスとは各取締役候補の専門のこと)。これを今後、裏切らないようにしてほしいものだ。
日本テレビの対応は妥当か
ところで今回、日本テレビは日本テレビホールディングスとともに緊急の臨時取締役会を開いて、このたびの決定と発表を決めた。
このことに関して、ガバナンスの観点から緊急開催した理由が語られていない、という批判がある。私の知る限り、開示理由義務を公開させる規定は存在しない。
もちろん上場会社だから投資判断に重要な決定事項を適時開示する。ただ開催理由を説明しろといっても、それは単に今回の事案が経営上の重要項目だったからだ、ということ以外ではない。
なお、メディアは報道機関としての公共的な使命がある。真実を報道する組織としては、真実をえぐり出す必要がある。
しかし、同時にSDGsと、それこそコンプライアンス時代の私たちには雇用主としての安全配慮義務が課せられる。
これは、従業員が不利益を受けない環境を確保する義務を定めたものだ。生命、身体の安全を担保せねばならない。そしてプライバシー保護も義務がある。二次被害やプライベート侵害を引き起こさない義務だ。何よりも、被害側への心のケアとともに、加害側への厳正な抗議や措置も求められる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら