スマホ新法の影響でアップルが機能制限を検討、EUでは既にiPhoneミラーリングが提供されず。競争促進法により新機能が日本でも制限される懸念

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EUでは、iPhone向けソフトウェアのiOSのような指定プラットフォーマーに対して、他社が機能のオープン化をリクエストすることができる制度があり、これに応えなければ、競争環境を阻害していると見なされ、課徴金の対象になり得る。

iPhoneミラーリングを提供することで、この機能もオープン化の対象とされ、iPhone内の情報に対する重大なセキュリティ懸念が生まれる。つまり、認証が取れていないデバイスから、iPhoneを操作するセキュリティ上の「穴」を開けることになるからだ。

加えて、現在指定プラットフォームとされていない「macOS」も、競争を阻害するプラットフォームに認定されるリスクが生じる。これらを懸念して、EUでの機能を制限することになった。

前述のように、スマホ新法がEUのデジタル市場法(DMA)に似ていることから、アップルが日本市場向けに、セキュリティやプライバシー上、極めて危険となり得る機能の開放を求められないために、機能提供を制限する可能性が出てきている。

EUへの回答期限は6月26日、独自のビジネスモデルが競争を阻害と指摘

アップルは電子機器の製造業でありながら、サービス部門の売上高が四半期ごとに4兆円に上る、特殊な存在だ。消費者がiPhoneなどの製品を買い、開発者がそれ向けのアプリを作る。アップルはアプリを販売する場を提供し、有料アプリにのみ、15〜30%の手数料を課す。そんなビジネスモデルを構築した。

しかしアプリ販売を行うApp Storeは、アップルがコントロールしており、これが競争を阻害しているのではないか?と法律で制限したのが、EUのDMAだった。

現在アップルは、iPhoneやApp Storeが、EUにおいて競争を阻害している点が指摘され、すでに800億円もの制裁金が課されている。回避策が認められなければ、6月26日以降、日次制裁が課され、追加の反論の機会を経て、10月から12月までにDMAへの非準拠が認定されれば、全世界の売り上げの10%にあたる最大390億ドルが課されることになる。

同様に制裁金を課されている企業は、同じく競争を阻害する巨大プラットフォームと認定されたFacebookやInstagramを運営するメタだ。EUは、マイクロソフト、グーグルと、アメリカのテクノロジー企業から莫大な制裁金を獲得してきた経緯があった。EU委員会自体のある種の「有望な収益源」の一つ、と見ることができる。そのため、「競争阻害」に対する純粋な行動との評価が難しい側面がある。

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