野党共闘不発で漁夫の利も? 石破首相が解散見送りで見いだした「7.20参院選」の勝ち筋

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同日は正午過ぎから与野党党首会談が開かれた。その席で、18日深夜にカナダでのG7首脳会議から帰国した石破首相が、サミットでのイスラエルとイランの軍事衝突への対応や、関税をめぐるドナルド・トランプ大統領との首脳会談の概要について報告。その中で石破首相は、日米首脳会談での協議は継続になったとしたうえで、「そうした状況での政治空白は避けなければならない」と各党首に協力を要請した。

続いて野田氏は、日本維新の会の前原誠司共同代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、共産党の田村智子委員長と個別に会談。「首相経験者として、(衆院解散による)政治空白は国益を損じるとの判断から不信任案提出は見送る」と伝えた。

これに対し、前原、田村両氏は「首相経験者の発言は非常に重みがある」(前原氏)、「適切な判断」(田村氏)と了解。玉木氏は「ちょっと正直、拍子抜けだ」と不満をにじませたが、野田氏の決断を認めざるをえなかった。

一連の動きを受けて、石破首相は同日夜、野田氏の対応を評価する形で、解散による政治空白を回避し、国会会期を延長せず、23日に参院選の日程を閣議決定する方針を決定。森山裕幹事長ら与党幹部に伝えたとされる。

ガソリン暫定税率廃止法案は「廃案」へ

事実上の会期末とされる20日には、衆参両院で本会議や各委員会での会期末手続きが進んだ。ただ、午前9時に開会した衆院財務金融委員会では、野党各党が提案している7月からガソリン暫定税率を廃止するための法案が審議入りし、数で勝る野党が選んだ阿久津幸彦委員長が3時間の審議終了後に委員長職権で同廃止法案を採決。野党の賛成多数で可決、続いて午後1時からの本会議でも同様に可決し、参院に送付した。

これを受けて、参院は与野党国対委員長会談で20日の参院本会議と財金委での廃止法案の趣旨説明と質疑実施で合意し、夕方の財金委で実質審議入りした。同委は21日に質疑と採決を行うが、参院では自公が過半数を占めるため、同案は採決を経て廃案となる見通しだ。

20日の衆院での採決では、同案を提案した立憲民主、維新、国民民主の3党は「暫定税率廃止を約束していた自公の裏切り」などと批判する一方、「大局的判断」で賛成したれいわ新選組が「廃案を前提とした露骨な参院選向けキャンペーン」(同党幹部)などと苦言を呈するなど、野党内の軋轢も目立った。このため、政界で関係者の間では「参院選で有権者がどう判断するかはなお不透明」との見方が広がる。 

参院選では、物価高対策や自民派閥裏金事件をきっかけとした政治改革が主な争点となる。併せて各党・各勢力は、深刻化するイスラエルとイランの軍事衝突に起因するエネルギーの安定供給確保策や、日米関税交渉での政府の対応をめぐって論争を挑む構え。約1カ月間にわたる選挙戦は「内外の政治課題が交錯するという異例の展開」(閣僚経験者)となりそうだ。

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