【“認知症1200万人時代”到来へ】2050年に消費額は「16.9兆円規模」に拡大 企業は経営戦略として「認知症」に向き合え
当然、そこには消費も発生する。2025年における在宅の認知症・MCI高齢者による消費支出は、年間約14.7兆円と推計される。2050年には約16.9兆円に達する見込みだ。
これは、2024年の訪日外国人による旅行消費額(約8.1兆円)の2倍以上である。認知症の人たちは、今後の企業戦略を考えるうえで、インバウンドや子どもに匹敵する巨大な顧客層として位置づける必要がある。
経営戦略の一環として認知症の人に向き合うべき
認知症の人は、現在の製品やサービスの多くを「使いにくい」と感じている。
理由はシンプルで、もともとの設計思想が認知機能の変化に対応していないからだ。スイッチが複雑、色分けが不明瞭、手順が多すぎる、マニュアルが難解……。そのような設計は、高齢者や認知症の人を“顧客から排除している”のと同じである。
逆にいえば、認知機能が変化しても使いやすい製品・サービスを提供できれば、顧客は離れない。それどころか、他の企業との差別化要因になり、ファンを増やすきっかけにもなる。
認知症の人への対応は、もはや「福祉」や「社会貢献活動」ではなく、明確な経営戦略の一部と捉えるべき局面に来ている。

実際に、認知症の人の視点を取り入れたプロダクトは、企業にも新たな価値をもたらしている。
たとえば、株式会社大醐が開発した「カカトがない靴下 Unicks」は、認知症の人と共に改良を重ねて生まれた。前後や左右を意識せずに履ける設計で、靴下をうまく履けない人の悩みを解消した。この商品は、介護用品という枠を超え、一般市場でも「誰もが使いやすい、魔法の靴下。」として人気を博している。

また、リンナイ株式会社は、認知症の人にも安心して使えるよう、ガスコンロに自動消火機能や誤操作防止の設計を導入。結果として、若年層や子育て家庭にも「安全な家電」として支持を広げている。

これらの事例は、認知症への対応が、結果としてすべてのユーザーにとって使いやすい「ユニバーサルデザイン」へとつながることを示している。
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