ウクライナ戦争は外交での解決が可能、前駐ウクライナ大使・松田邦紀氏が断言、制裁で対ロ圧力高め、戦争継続断念させる必要あり

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――ロシアに対して、何を言うべきか。

ロシアに対しては、自分たちの立場が戦争において強くないことを理解させることが重要だ。これをわからせる一環として、対ロ制裁の強化が必要だ。また言論統制をしているロシアの国民に正しい情報を伝えることが必要だ。

――多くの国が軍事的に今、ロシアが優勢だと考えているが。

その認識は正しくない。侵攻を始めた時、ロシアはウクライナをなきものにすることを狙っていた。3年経って、その目的は実現できていない。戦争をいたずらに続けている。

「ロシアが優勢」は正しくない

黒海の西半分をウクライナが押さえた。ロシア黒海艦隊はその黒海で作戦行動ができていない。ロシアによる空襲が続いているが、ロシア国内の軍事基地、軍需産業が大きな被害を受けている。ロシアは継戦能力で大きな被害を受けている。ほぼ膠着状態である。

前線はせいぜい10キロメートル程度しか動いていない。ウクライナの防衛ラインは保持できている。全体を概観すれば、ロシアは戦争目的達成に失敗し、その後の戦闘はロシアに決め手がないまま推移している。今、ロシアに圧力を掛ける余地があるとみている。

――仮に直接交渉が上手くいかなかった場合、どうなると思うか。

直接交渉がうまくいかない場合、戦争が継続する可能性がある。ウクライナ軍は戦争を継続する意思もある。ウクライナは武器弾薬の国産化に成功した。欧州の武器支援も含め、継戦能力を維持している。

まつだ・くにのり/福井県出身。1982年東京大学教養学部教養学科卒業、外務省入省。在アメリカ合衆国日本国大使館1等書記官。1998年在ロシア日本国大使館参事官。2004年外務省欧州局ロシア課長。在イスラエル日本国大使館公使、デトロイト総領事、香港大使兼総領事を務める。2021年駐ウクライナ特命全権大使、2024年10月離任。駐ウ大使時代に官民を挙げたウクライナ支援に尽力。反発したロシアから2025年3月3日に入国禁止措置を受けた(写真・吉田成之)

今後、不幸にして、アメリカが軍事支援を削減することになっても、ある程度カバーできる。ロシアは北朝鮮の支援に依存している。一方、国内生産に問題があり、ロシアの継戦能力は万全ではない。

――日本政府はどのように行動すべきか。

侵攻開始以来、日本国民はウクライナに寄り添って、さまざまな支援をしてきた。いかにこれに大きな意味があるのか。これを強調したい。

ウクライナからすると、遠くアジアにある日本が声を上げてウクライナを支援したことはウクライナ政府や国民に大きな勇気を与えた。多分、日本国内で考えている以上の感謝がある。

もう一度基本に立ち返って、この問題が遠い欧州の出来事ではなく、終わり方如何では日本の安全保障に影響することを理解していただきたい。そのうえで、日本としてできることと、できないことを踏まえたうえで、地雷除去とか、がれき処理とか、経済的支援など、これまでやってきたことを拡大すべきだ。

このほか、経済復興に向け、日本の戦後復興の経験伝授が必要だ。日本で10月に国際地雷会議が行われる。投資や技術面で日本企業が協力することが必要だ。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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