――国際社会の認識として、ロシアとウクライナが互いに外交上の駆け引きをしている。どっちもどっちだみたいな、冷ややかな意見も出てきているが。
外交だから、それぞれ外交上の駆け引きを行うことはありえることだ。ただ、そのことと、どっちもどっちなんだから、侵略している国だけでなく、侵略されている国もそれなりに妥協しなくてはいけないという意見はあまりに短絡的議論だ。
今回の戦争は安保理常任理事国であるロシアが国際法に明確に違反する形で、武力行使を行ったことが本質だ。
この問題の解決が侵略した側に有利だったということになれば、戦争が終わった瞬間、新たな戦争の種をまくことになる。侵略したロシアに有利な形で終わる事態を招いてはならない。そのためにも、国際社会はロシアに大きな圧力を掛ける必要がある。
領土変更は国際社会が警戒すべきこと
――ウクライナは妥協策として、何を差し出すことになるのか。4州やクリミアの帰属を法的にロシアに移すべきとの意見をどう思うか。
侵略国が武力行使した結果、デジューレ(法的)に領土を変更することに成功したという前例をつくることは、ウクライナのみならず、国際社会が警戒すべきことだ。
したがって、国際社会は米国も含め、侵略されているウクライナに不必要な圧力を掛けてはならない。国際法に合致しない妥協を迫ってはならない。ウクライナ自ら納得し、国民が受け入れる和平が達成されるよう見守るべきである。
――旧ソ連がバルト3国などを実効支配し、占領を続けたように、ウクライナはデジューレではなく実効支配(デファクト)として、ロシアによる東部・クリミアでの実効支配継続を認めるのか。
現在まだ停戦が実現していない段階で、和平実現まで紆余曲折があるだろう。この段階で実効支配を認めるか否かは仮想の問題である。
ウクライナ側には明確な回答はないと思う。今の段階でウクライナに対し、ここまで妥協しろ、というべきではない。侵略したロシアに対し、ウクライナと米欧が無条件で停戦に応じろと言っている。ここから出発すべきである。
一方で、一般論として言えば、歴史上、その時点での戦場での現状を受け入れた過去はあるのも事実だ。
――トランプ政権の仲介に何を望むか。
すべての国がトランプ政権に対し仲介の労をとるのであれば、原理原則、つまり侵略されたウクライナ、欧州などすべての国がウクライナの立場を踏まえて仲介してほしいと考えている。これがアメリカの利益にもかなうと説明していくことが求められている。アメリカを正しい側に引き付けていくことが必要だ。英仏独など多くの国が努力する必要がある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら