テレサ・テンはなぜ「台湾人」と自分のことを言わなかったのか、中国人、台湾人とアイデンティティーで悩む台湾芸能人の胸の内

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行政院大陸委員会は、中国のプロパガンダに協力している台湾の芸能人として、20人余りを調査対象としていると発表しており、欧陽娜娜(オーヤン・ナナ)、侯佩岑、張韶涵、楊丞琳などを具体的に名指ししている。

そのうち最重点調査対象に挙げられているのは、欧陽娜娜さんだ。彼女は、これまでも民進党政権から目を付けられていた芸能人だ。中国の宣伝工作に協力したという彼女の「罪名」は、枚挙にいとまがない。

人口14億の巨大マーケットの存在

例えば中国の国慶節を祝う番組で、中国大陸、香港、マカオの芸能人と一緒に、中国の愛国歌曲「我的祖国(私の祖国)」を歌った。中国軍が台湾に対して軍事演習を行ったとき、「台湾は古来より中国の領土であり、中国は1つしかない」と主張した。台湾の芸能人数十人とともに「台湾は中国のもとに必ず帰って来る」という中国側の主張に賛同を表明した、などなど。

欧陽娜娜さん(写真・ VCG/VCG via Getty Images)

台湾の人口は約2300万、中国は14億だ。巨大なマーケットである中国での発展を目指す台湾の芸能人は多い。しかも、同じ中国語を使う台湾の芸能人は、外国人と違ってそのままで中国に入っていける。

彼らが中国を支持する発言を行うことに対して、台湾の多くの人たちは、金のために強制されて中国共産党の言うことを聞いているのだ、と考えている。しかし、はたして皆がそうなのだろうか。

現在、台湾当局からにらまれている欧陽娜娜さんとはどのような人物なのか。2000年に台湾の台北市で生まれた25歳。父親の欧陽龍さん、母親の傅娟さんはともに有名な俳優だ。

彼女は日本人にはあまり知られていないだろうが、テレサ・テンさんと重なる1970、1980年代に日本で活躍した台湾出身歌手、欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)さんの姪っこだといえば、ぐっと親近感が増すかもしれない。一家は、江西省吉安市にルーツを持つ台湾の「外省人」だ。

父親の欧陽龍さんは、芸能界から政界に転じ、国民党所属の台北市議会議員、国民党のスポークスマンなどを務めたことがある。国民党スポークスマンだった時、中国が主張する「1つの国に2つの制度」(つまり香港方式)による統一には台湾でコンセンサスがないと発言したことが、中国側から台湾独立を主張しているとみなされる。

このことで、欧陽娜娜さんは一時期、中国のメディアからボイコットされることになった。結局、彼女は後に「実は私は中国人だ」と釈明することになる。

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