テレサ・テンはなぜ「台湾人」と自分のことを言わなかったのか、中国人、台湾人とアイデンティティーで悩む台湾芸能人の胸の内

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なぜ冒頭でテレサ・テンさんを取り上げたかというと、台湾ではこのところ、中国で活動する台湾出身の芸能人に対して、締め付けが強化されているからだ。それは、テレサ・テンさんたちの思いとも関係している。

2025年5月20日に就任1周年を迎えた台湾の民進党(民主進歩党)の頼清徳政権は、中国との対決姿勢を強めている。こうした中で、中国から台湾への浸透工作がクローズアップされている。それに台湾の芸能人が利用されているというのだ。

台湾芸能人への当局の締め付け

台湾の芸能人に対する締め付けを強化する根拠は、頼清徳総統が2025年3月に発表した17条から成る対中国政策にある。この中で、「中国で活動する芸能従事者の指導と管理の強化」が設けられ、「中国で活動する芸能人に対し、言動において注意すべき事項を提示し、国家の尊厳を損なう言動に関する取り締りの範囲を明確にすべきである。

これにより、中国側が台湾の芸能人に対し、特定の発言や国家の尊厳を損なう行動を取るよう圧力をかけることを防止する」と主張している。

では、中国で活動する台湾の芸能人が中国のプロパガンダに協力して政治的な発言を行ったらどう罰するのか。台湾で対中国事務を担当する行政院大陸委員会の邱垂正主任委員(大臣)は、議会で質問されてこう答えた。「台湾地区と大陸地区人民関係条例第33之1条に違反する可能性がある」。

「台湾地区と大陸地区人民関係条例」は、台湾と中国大陸の間の関係について設けられている法律だ。その第33之1条は、台湾の個人・法人・団体・機構が、許可なくして中国大陸地区と協力して政治的な行為を行ってはならない、と定めている。罰則は50万台湾ドル(約240万円)以下の罰金だ。

実際に法律に違反することになるかどうかは判決が出たことがないのでわからないが、現在、同条例を強化する改正案が用意されているという。

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